- #1
- #2
プロ野球PRESSBACK NUMBER
「あれは忘れられない…」阪神・岩崎優が今も悔やむ痛恨のマウンド…“タイトルが消えた”大竹は「岩崎さんが2日間、落ち込んでいたと聞いて…」
text by
酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph byNanae Suzuki
posted2024/03/06 11:02
岩崎は新シーズンに向け静かに牙を研ぐ
岩崎は6月17日、甲子園でのソフトバンク戦でも失敗していた。その日も大竹が6回1失点で勝利投手の権利を持っていた。9回は岩崎の出番だ。だが、2安打1四球と崩れ、1点のリードを守れずに逆転負けを喫していた。
クローザーの宿命
リリーフエースは継投重視の現代野球で花形である。岩崎も昨季、胴上げ投手としてリーグ優勝、日本一の瞬間に立ち会い「勝った時の喜びは他のポジションでは味わえません。やりがいはすごくありますね」と言う。だが、一方で、チームの勝敗も、選手の人生をも背負うのが、クローザーの宿命である。「守護神は抑えて当たり前」とみられる重圧も重責を担う者にしか分からない。岩崎は厳しい顔つきで言う。
「打たれた後、負けてしまった後の方が、後々まで印象が強く残っているんです」
長く第一線で投げ続ける中で、無数の傷を作り、失敗を乗り越えてきた。
今季の継投パターン
いまや、岩崎は救援陣の「重心」である。少なくとも岡田彰布監督は、そのように位置づけているだろう。クローザーとしても、セットアッパーとしても実績十分の彼がいるからこそ、さまざまな継投パターンを練ることができる。2023年のセーブ王が今季の役割について「まだ言われていません」と明かすように、キャンプで評価を上げた新外国人のハビー・ゲラの適性を見極めた上で、最善手を打とうとしている。
「(クローザーへのこだわりは)あんまりないですね。他に務まる人がいるなら、それでもいいんじゃないかと思う。勝つために監督が自分を駒としてどう使うかです」
過去2年も抑えを務めたが、いずれも守護神に生じたアクシデントに伴う“代役”だった。22年はカイル・ケラーが不調で、23年は湯浅京己の離脱でお鉢が回ってきた。そんな状況でも、黙々と腕を振った。
「何が起こるか分かりませんし、心の準備をしていたこともあって、すんなりと入れたんです」
「完走することが一番」
2月の沖縄。ブルペンでは低めに伸びていく速球の軌道を入念に確かめながら、投球フォームを仕上げてきた。3月からは実戦に入っていく。今季の役割は決まっていないが、チームのため、仲間とともに身を粉にして戦うと決めている。
「まず完走することが一番です。その中で数字を出す、次に周りを引っ張っていくこと。その順番だと思っています」
勝負の厳しさが身に染みているからこそ、堅実に明日へと向かう。
(第1回も配信中)