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ボクシングPRESSBACK NUMBER
「ファイトマネーは副業扱い」サラリーマンボクサー阿部麗也30歳がついに世界王者に挑戦…上司や同僚もびっくり“上京ヤンチャ少年”の12年
posted2024/03/01 17:03
text by
栗田シメイShimei Kurita
photograph by
Kiichi Matsumoto
作業用のヘルメットを深々と被り、ゴーグル姿で溶接作業を淡々と行う。この様子だけ切り取ると、世界戦のタイトルマッチに挑むボクサーだとは到底想像がつかない。
だがこの男、「天才」を自称し、サラリーマンとして働きながらニューヨークで初の世界チャンピオンを目指す、元WBOアジアパシフィック・フェザー級王者である。
阿部麗也、30歳。世界戦を半月後に控えていても、いつもと変わらず工場のライン作業で汗を流していた。減量も佳境に差し掛かり、昼食は食堂の150円のかけそば一杯。そんな折の取材だっただけに、筆者も神経を尖らせ対面したのだが、阿部はどこか達観したかのようにこう言うのだった。
「どうせ練習時間は限られてますから(笑)。普段通りの生活をして、日常の延長線上で世界に挑む。それを大切にしています。プロボクサーは注目してもらってナンボなので」
世界を目指すサラリーマンボクサー
ここは、神奈川県・藤沢市に位置する「プレス工業」の工場。トラックなどの自動車の精密部品を製造する工場の組立1課が阿部の職場だ。一部のトッププロを除くと、大半のボクサーは働きながらリングに上がる。サラリーマンボクサー自体は決して珍しくない。しかし、阿部のように世界タイトルを争うような選手となれば、話は別だ。職場の理解や、周囲を巻き込みボクシングに打ち込める環境も勝ち取る必要があった。
「第一印象は、ちょっとヤンチャな今どきの若い子。でも責任感が強くて仕事は真面目という、ギャップが印象的でした」
阿部の上司で、入社から12年間を見守ってきた黒川和作さん(46歳)は出会いをこう回顧した。