濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「うざってえヤツ(苦笑)」安納サオリとスターライト・キッド、名勝負の裏にあったライバル関係…「意地とこだわり」が詰まった17分42秒
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2024/02/29 17:01
試合後、向き合って互いの手を合わせた安納サオリとスターライト・キッド
「サオリはやられてもやられても立ち上がってきた。うざってえヤツ(苦笑)。必ずもう一回。向こうも“いいよ”って言うんじゃないかな。今回出せなかった技があるし、エターナル・フォーもある」
エターナル・フォーは“永遠の敵”という意味。デビュー当時からのライバル、AZMに勝つために使い始めた技だ。その特別な技を、次は安納にも使う。
「サオリは私のライバルだから」
デビュー直後からの空白期間は埋まった。それは安納も感じたことだ。
「スターダムに再参戦するまで、キッドを別世界の人として見ていたところがあるんです。でも今は同じ世界にいるんだと実感してますね。キッドが私の世界に入ってきた気もします。今回タイトルマッチで闘って“やっと出会えた”と思いました。私たちのストーリーが動き出した」
安納と中野たむが誓った「頂点で会おう」
チャンピオンが対戦していない選手、対戦数が少ない選手はまだまだいる。防衛戦のたびに新たなストーリーが紡がれていくことになるはずだ。初防衛に成功した2.4大阪大会では、所属するユニット「コズミック・エンジェルズ」のリーダーである中野たむが復帰。たむはアクトレスガールズ時代の安納の後輩でもある。たむのデビュー戦の相手を務めたのが安納だった。
大阪大会のリング。安納のセコンドについたたむは、かつて自分も保持した白いベルトを安納の腰に巻いた。2人で向き合うと上方を指差す。
「頂点で会おう」
アクトレスガールズ時代に共演した舞台のセリフ。先に団体を抜けたたむは、このセリフを安納との約束にした。自伝の中でも安納と対談し「頂点で会おう」で締め括った。安納は対談での心境をこう振り返っている。
「あの時は“頂点で会おう”と言われてもうまく言葉が返せなかった」
それだけ、スターダムのトップ選手は眩い存在だった。
「でも今なら胸を張って言えますね。今度、私たちが対角で出会う場所。そこが頂点です」
安納サオリがベルトを巻いた意味
2.4大阪大会ではエグゼクティブ・プロデューサーで団体創設者のロッシー小川氏が契約解除されている。理由が引き抜き行為だけに「次の契約更改で誰が退団するのか」と不安なファンも多いはずだ。そんな中で、安納は言う。
「私がやることは変わらないです。“今まで以上に頑張る”とあえて言うまでもないのかなって。ずっとそうしてきたので。目標をブレずに追っていくだけですね」
何より(まだ見ぬものも含めて)紡ぐべき物語がいくつもある。今、“白いベルト”を安納サオリが持っていることには、大きな意味があるのではないか。