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藤浪晋太郎のために7カ月休職…29歳の競馬実況アナウンサーはなぜ単身渡米したのか?「死ぬ時に後悔したくない」「最後の最後まで悩みました」
text by
堀尾大悟Daigo Horio
photograph byYuhi Hattori
posted2024/02/28 06:02
藤浪と関西テレビアナウンサーの服部優陽。競馬や野球の実況アナとして活躍していた彼がなぜ休職を決断し、アメリカへ向かったのか
通常の会社でも、一人の社員が休職で抜けた穴は大きい。ましてや人員の限られる専門職のアナウンス部だ。それに、休職の理由が見方によっては「プライベートな遊び」とも受け止められかねない。社内で相当な議論と調整があったことは想像に難くないだろう。それは、服部自身が誰よりも理解している。
「いろんな立場の人に迷惑をかけたと思います。また、この決断に対し、社内外から否定的な見方をされることも覚悟していました」
死ぬときに「アメリカに行かなかったよな」と後悔したくない
それでも、彼はアメリカに渡り、藤浪の挑戦を見届ける決断をした。「最後の最後まで悩みましたね……」と苦笑する服部に、あらためて、なぜそう決断したのか聞いてみた。
「やっぱり、死ぬときに後悔したくないな、という思いですね。棺桶に入るときに、『あのとき、藤浪を追ってアメリカに行かなかったよな』という後悔が一生ついて回るんだろうな、と。そう思って最後は決断しました」
2023年1月14日、藤浪晋太郎がオークランド・アスレチックスと1年契約で合意したことが日本で正式に発表された。その海を渡る挑戦に対し悲観的な報道が飛び交う中、藤浪を応援するために渡米した男のもう一つの“挑戦”が始まろうとしていた。
2ドルの「辛ラーメン」を朝、昼に分けて……
2023年4月。関西テレビに休職届を出した服部は、大阪からカリフォルニア州オークランドへと渡った。
ホームステイ先を拠点に、日中は現地の無償で受講できる英会話学校に通い、夜は本拠地のオークランド=アラメダ・カウンティー・コロシアムで藤浪を応援する日々。帰国後にドキュメンタリー番組を制作することを見すえ、藤浪の試合結果や彼との会話で聞いた言葉を毎日、日記に書き留めた。
現地での生活でいちばん苦労したことを尋ねると「やっぱり物価ですね」と笑う。