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藤浪晋太郎のために7カ月休職…29歳の競馬実況アナウンサーはなぜ単身渡米したのか?「死ぬ時に後悔したくない」「最後の最後まで悩みました」 

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堀尾大悟

堀尾大悟Daigo Horio

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photograph byYuhi Hattori

posted2024/02/28 06:02

藤浪晋太郎のために7カ月休職…29歳の競馬実況アナウンサーはなぜ単身渡米したのか?「死ぬ時に後悔したくない」「最後の最後まで悩みました」<Number Web> photograph by Yuhi Hattori

藤浪と関西テレビアナウンサーの服部優陽。競馬や野球の実況アナとして活躍していた彼がなぜ休職を決断し、アメリカへ向かったのか

「本当に、何を買うにも高いんです。マクドナルドのハンバーガーセットも3000円。球場のビールも2000円近くするので、ビールを飲みながら観戦する余裕などありませんでした」

 現地で仕事もなければ、ましてや会社からの給与補償もない。資金がチケット代や交通費に消えていく中で、日々の生活を極限まで切り詰めた。朝食は1袋2ドルの「辛ラーメン」を食べ、昼食は残った汁にカリフォルニア米を入れて腹を満たした。

電車、バスで身の危険を感じるほどの治安の悪さ

 もう一つ、アメリカでの服部を悩ませたのは、現地の治安だ。車を持たない服部は、球場への移動に電車とバスを乗り継いでいたが、何度も身の危険を感じたという。

「アメリカでは基本的な移動手段は車で、電車やバスといった公共交通機関を使うのは車を持てない人。だから、必然的に公共交通機関の治安が悪くなるんです」

 ある日、2両編成の連結バスに乗ったところ、その連結部分に人がずっと立っている。「なんやろ」と観察していると、バスの乗客がその人にお金を渡し、代わりに小さな紙を受け取っている。乗客は席につくや、その紙を鼻に近づけ、吸っていた。クスリの売買をしていたのだ。

「彼らにとって、バスに乗るのは移動が目的ではなかったんですよね。このバスにはもう乗りたくねえな、って思いましたね」

「こいつ、折れないのすげえな」

 シーズン開幕当初の藤浪は、初めてのメジャーの環境で苦しんでいた。開幕ローテーション入りを果たすも、4戦4敗。防御率は14.40と残酷な数字が残った。

【次ページ】 それでも藤浪はマウンドに立ち続けた

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