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オリンピックPRESSBACK NUMBER
あの野獣がキューピッド?「松本薫さんが唐突に…」柔道・高市未来29歳が失意の東京&大ケガから復活「心の支えは“絶対に否定しない夫”」
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph byMiki Fukano
posted2024/02/14 11:03
メダルを逃した東京五輪後は引退も考えたという高市未来(29歳)。夫の支えもあり、3度目のオリンピック代表の座を掴んだ
“何も言えなかった”と夫は語るが、ただ傍にいてくれるだけでありがたかったと高市は感謝する。
「自分の夫を褒めるのもおかしいですけど、人の話をしっかり聞ける人なんですよ。とにかく優しくて、そこはすごく尊敬するというか、学びたい一面です」
一緒に涙を流してくれる夫の存在が傷ついた高市の心を癒してくれた。
いつもどんな時も夫は高市がリラックスできるように聞き役に徹していた。
集大成と決めていた東京五輪後、自身の去就を決断するとき、左膝前十字靭帯を断裂したとき、いつも黙って寄り添ってくれたのは夫だった。
「彼は絶対に否定しないんですよ。靭帯が断裂したときも、『もう十分に頑張ってるよ』とか『頑張りすぎなんだから少し休んだら?』と言葉をかけてくれて。それで心の余裕ができて、自分を肯定できるようになったというか。彼の方が私よりも私のことを理解してくれているかもしれません(笑)」
選手生命をも脅かす怪我だったが、現役続行という道を選んだ彼女の決断を賢悟さんは「彼女らしいな」と思ったという。
出会いは10年前、キューピッドは松本薫
高市夫妻の出会いは10年前にさかのぼる。
2014年の代表合宿でのこと。キューピッド役となったのはロンドン五輪女子57kg級の金メダリスト・松本薫さんだった。
「国際大会の試合後、ドーピング検査を待っているときに、松本さんと彼女と48kg級の近藤(亜美)と私の4人が残されたんですが、その時に松本さんがやたら彼女を推してきて」(賢悟さん)
「私の試合が終わった直後、しかもドーピングの前後ですよ。松本さんが唐突に『この子どう?』って。その時は“この人、一体何を言ってるんだろう!?”って思いましたよ(笑)。絶対意味もなくただゴリ押ししただけだと思うんですけどね(笑)。でも、それがきっかけでお互い意識し始めて話すようになったんです」(高市)
賢悟さん曰く、その2、3カ月後には「いい意味で気を使わずいられたし、一緒にいて楽しかったので」と交際がスタート。高市が28歳、賢悟さんが29歳だった2022年11月には約8年の交際を経て結婚した。