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ボクシングPRESSBACK NUMBER
井上尚弥が「怪物」と評した“天才アマ”は、なぜプロに行かなかった？ ロンドン五輪出場・須佐勝明が明かす、23歳で一度引退した理由
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph byAP／AFLO
posted2024/02/01 11:00
井上尚弥が自著『勝ちスイッチ』（秀和システム）で「怪物」と評した須佐勝明。アマの天才ボクサーは23歳で一度、競技人生を引退する。その理由とは――。
「僕（フライ級）より階級は上でしたが、絶対に舐められたくなかったんです。先輩の意地ですよね」
プロのジムから出禁になったことも
須佐は華やかな実績を残す後輩に感化され、メキメキと実力をつけていく。プロの名門ジムに村田とともに出稽古に行くと、ふたりして日本ランカーたちを打ち負かすことも珍しくなかった。道場破りさながらだった。
「プロをボコボコにして、相手のトレーナーさんが黙り込むこともあって……。僕ら2人そろって出禁になったジムもありました（笑）。『あいつらはやばいぞ』とプロ関係者の間でも噂になっていたようですね」
オリンピックに一緒に行こう
ターニングポイントになったのは、大学3年時の関東大学1部リーグ。2004年のアテネ五輪に出場した東京農大の五十嵐俊幸（元WBC世界フライ級王者）を負かすと、確固たる自信が生まれた。細かった体には筋肉がつき、さらに勢いに乗る。全日本選手権、国体と次から次へと大会を制覇。国内では向かうところ敵なしの状態に。4年時にはバンコクで開催された国際大会のキングスカップ、ドーハで行われたアジア競技大会でいずれも銅メダルを獲得した。
「あの頃には、村田と同じレベルくらいになっていたと思います。タイ（キングスカップ）から帰国するときに成田空港で自衛隊体育学校の本博国監督から『オリンピックに一緒に行こう』と言われ、本気で目指すようになったんです」
4年に1度の祭典には特別な思い入れがあった。幼い頃からテレビ観戦し、スポーツ最高峰の舞台というイメージが刷り込まれていた。欲しかったのは、世界チャンピオンのベルトよりも五輪のメダル。大学卒業後は複数のプロジムから誘いを受けたものの、08年の北京五輪出場に向けて、迷わず自衛隊体育学校に進んだ。
10くらいのプロジムからオファー
「あの時代はプロに一度行くと、アマに戻れなかったんです。まずはオリンピックに出場して、そこから新たな世界が見えてくるかな、と思っていました」
