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「兄の賭博問題でヤジも」大谷翔平より“高評価だった”元ソフトバンク笠原大芽…博多ラーメン店で働く今「二軍慣れしていた」「常連客から店長に」
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byJIJI PRESS
posted2024/02/03 11:00
2012年12月、ソフトバンクからドラフト指名を受けた笠原大芽(福岡工大城東高)
それでも、翌シーズンも笠原自身の様子は以前とさほど変わらなかった。
「周りが思うほど、僕はそんなに気にならなかった。それにホークスの中では逆にイジってくれて、変に気を遣われることもなかった。僕はみんなの優しさに助けられたと思っています」
5年目で一軍デビューも…「二軍慣れしてました」
かくして迎えたプロ4年目の2016年シーズンはウエスタン・リーグで1位の9勝、118奪三振を記録。シーズン後には第1回WBSC U-23ワールドカップの日本代表に選出された。年代別とはいえ侍ジャパンのユニフォームに袖を通して、オーストラリア代表との決勝戦では先発を任され優勝に貢献した。
2017年、5年目でついに一軍デビューを果たす。しかし、待望のマウンドに立つと笠原はまるで別人のような投球しかできなかった。同年は6試合に投げて防御率4.32。翌6年目は一軍登板1試合のみで防御率9.00。未勝利のままそのオフに戦力外通告を受けたのだった。
「二軍慣れしてましたね。二軍で気持ちよく投げてしまうことに慣れきっていた。一軍に上がるとチームの雰囲気も球場の雰囲気も全く違うじゃないですか。戸惑うし、力が入るし」
その後、2019年は育成選手として再契約。ウエスタン・リーグでは5勝2敗とまずまずの成績を残し、直球も140キロ台後半と力強さはあった。ツーシームや大きなカーブ、スライダーも健在。だが、当時のソフトバンクは4年連続日本一を果たすなど黄金期で戦力層が分厚く、そこに割って入るにはもう一押しが足りなかった。
「結局、育成になった時も『もう1年延びてよかった』くらいしか思っていなかったんです。もともとスイッチが入るタイプじゃない。言ってしまえば、努力するタイプじゃない。大谷とか見ていると全然違いますもん。まあ、ファームでタイトルを獲った4年目に一軍に上がれなかったのが全てじゃないですか。でも、そこも含めて後悔はない。自分はそこまでの選手だったということ。自分の野球に対する考えが甘かった。周りと意識が違いました。それがプロで活躍できるかできないかじゃないですか」
笠原は淡々と、そして笑みさえ浮かべながらそんな風に振り返った。