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敵地の罵声に「シーッ!」全米を驚かせた富永啓生の肝っ玉…NBAドラフト予想に名前はないが、米識者の評価は?「トミナガは小柄すぎる。ただ…」
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byGetty Images
posted2024/01/24 11:03
敵地の大ブーイングにも動じず、強みを発揮したネブラスカ大・富永啓生。2月1日で23歳になる
富永のバスケットボールキャリアにとって、2024年が極めて重要な1年になることは間違いない。まずはネブラスカ大の得点源として自己初のNCAAトーナメント出場を目指し、その後にパリ五輪、そしてNBAへのチャレンジ――。
サマーリーグなどを含めたNBAへの挑戦プロセスと、日本代表でのプレーを両立させることが日程的に可能なのかは定かではない。それらのスケジュールが整ったとしても、現実的にNBAへの道のりは容易なものではないはずだ。
ただ、歴史のあるネブラスカ大でも瞬く間にビッグネームになった富永の独特のスター性とバイタリティは周囲に何かを期待させる。メンフィス・グリズリーズのエグゼクティブとして渡邊雄太との2ウェイ契約に尽力した経歴があり、現在はThe Athleticでシニアライターを務めるジョン・ホリンジャー氏が昨年9月、富永についてこう記していたのを思い出す。
「富永はNBAでSGの役割を果たすにはおそらく小柄すぎるのだろう。ただ、彼は正確なシューターで、とにかく積極的。トロイ・ダニエルズのようなキャリアを歩んでいくチャンスがあるのかもしれない」
ここでホリンジャー氏が比較対象として挙げたダニエルズとは、身長193cmと小柄ながら、Dリーグ(現Gリーグ)から這い上がってNBAに辿り着いたSG。そのダニエルズもまた3P成功率ではキャリア平均39.5%とロングジャンパーを得意とした選手だった。元エグゼクティブのこんな指摘からは、決して無視できない興味深い存在である富永への期待感が伝わってくるようでもある。
楽しみが広がるワンダーボーイの未来
「できる範囲のことはすべてやっていきたいです。もちろん五輪という大きな大会も控えていますが、それ以前に、とにかく1日1日、レベルアップしていくこと。今は本当に1日1日を大事にやっています」
“1つ1つ”、そして“1日1日”――。
今回の取材中、何度もそれらの言葉を繰り返したサウスポーは、現在が自身にとってどれだけ大切な時間かを十分に理解しているのだろう。その先に見えてくるのが五輪での成功、NBAへの到達というハッピーエンドなのかどうかはわからない。
1つだけ言えるのは、富永がそれらの目標に向かって最後までベストを尽くし続けるだろうということ。極めて重要な意味を持つ2024年が終わる頃、“類い稀なシュート力”“度胸”“意志の強さ”を備えたワンダーボーイがどんな景色を視界に収めているのか、今から楽しみでもある。