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「お前、今、大迫に20秒負けているからね」東洋大・酒井俊幸監督のゲキに応えた設楽悠太…箱根駅伝区間賞の舞台ウラ「なんか不思議っすよね」
posted2024/01/13 11:02
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph by
AFLO
『箱根駅伝「今昔物語」100年をつなぐ言葉のたすき』(日本テレビ編/文藝春秋刊)より、感涙のエピソードを抜粋して紹介します。第3回は「ライバル物語の序章 設楽悠太」(東洋大学 第87〜90回出場)です。【全3回の3回目/第1回「今井正人」編・第2回「川内優輝」編へ】
マラソンで16年ぶり日本記録更新
あの日、風が強く吹いていた。
第89回大会(平成25年)の3区、湘南大橋を吹く風に体ごと持っていかれそうになりながらも、踏ん張ってトップを走っていたのが東洋大の設楽悠太(3年)である。
後ろからは、同学年の大迫傑(早大)や井上大仁(山学大・2年)らが集団となって追いかけていた。この年は、各大学のエース級が3区に顔を揃えていた。
彼らの後の歩みを思うと、この年の駅伝が特別なようにも思えてくる。
長らく低迷した日本男子マラソン。平成30年の東京マラソンで従来の記録を16年振りに更新したのが設楽だった。同じ年、井上は日本人選手としてじつに32年振りとなるアジア大会の金メダルを獲得。
マラソンの記録は同年、さらに大迫によって塗り替えられた。シカゴマラソンで設楽の記録を21秒更新。停滞していた時計を、一気に前に動かしたのがこの世代である。
「お前、今、大迫に20秒負けているからね」
まるで将来、こうなることを見越していたかのように、3区を走る設楽さんには、運営管理車に乗る酒井俊幸監督から、こんな檄が飛んでいた。