「まったくなかったです。ここに来るのは本当に覚悟がいりましたよ。ただ、僕が浦和を退団するという記事が出た数日後に、小松（裕志）社長から『うちでよければすぐに来て欲しい』という連絡があったんです。その時は本当に嬉しかった一方で、まだJ1からのオファーもあるかもしれないという気持ちもあって。でも、最終的にはそう言ってくれる人の気持ちに応えるのが、自分らしい生き方だと思ったんです。

　カテゴリーとか環境ではなく、想いを大事にしないといけないなって。それが今こうやって岐阜で頑張れているきっかけだし、自分が岐阜のことを本当に好きになったきっかけなんですね。やっぱり、人生はいろいろと繋がっているんですよ。強い想いがあれば、先が開けていくんです。ただ、サッカーに関してはあまり思い通りにはいかなかったけど（笑）。3年間も在籍しながら、J2に昇格できなかったのは、やっぱり心残りですよ」

23年J3最終節、ギラヴァンツ北九州戦　©Kaz Photography/Getty Images

一応、僕も代表経験があるから、聞く耳を持ってくれる

――先ほど、選手として言いたいことはすべて伝えたと言っていましたが、具体的にどういうことを話したんですか。

「プレーの細かいことも言ってきましたけど、主にメンタルだったり、考え方のところですね。特に上手くいっていない時に、どうプレーするかっていうのは話してきたつもりです。例えば、俺だって上手くいかない時はいっぱいある。そういう時は守備から頑張って、シンプルにプレーするとまた自分の方に流れが来るよとか。ポジショニング、ボールの持ち方ひとつでも状況は変えられるよとか。

2021年、FC岐阜に加わってからの柏木　©Masashi Hara/Getty Images

　一応、僕もJ1でやっていたし、代表経験もある人間だから、彼らは聞く耳を持ってくれるんですよね。ただ、僕は絶対に上からじゃなくて、同じ目線で話すようにしていました。だからみんな慕ってくれたし、そういう状況を作れたことは、自分がここで示すことができた成果だと思っています。昔の自分だったら、面倒くさくて逃げ出していたかもしれないですけど、真剣に向き合って、チームのために100%の力を出し続けることができた。そこは本当に成長できたところだと思っています」

本気で自分を変えに来たところだけは見せ続けられた

――チームに対しての影響力もあったと思いますが、岐阜というクラブや街に対しても、この3年間で様々なアプローチをされてきましたよね。

【次ページ】　引退後も岐阜を拠点に活動するワケ