“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
「“神の一声”がなくなった」黒田剛が去った青森山田はどう変わった? “元10番”の新監督が語る、名門の重圧と意地「一番負けたくない人」
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byYohei Osada/AFLO SPORT
posted2023/12/30 11:07
黒田剛前監督が退任し、正木昌宣監督のもと新体制でスタートした青森山田(写真は昨年度大会)
正木 それは、私も驚きました。「選手権県予選が終わったら、新人戦、残りのプレミアリーグ、選手権もすべてお前が監督として指揮を執ってほしい」と。てっきり、選手権まで指揮を執ってから引き継がせてもらうものだと思っていたので、本当に青天の霹靂でしたね。
――その間、およそ2カ月弱。気持ちの切り替えは決して簡単なものではない気がします。
正木 昔から黒田前監督は私に多くを語らず、「見て感じろ」と背中で示すことが多かった。それがこの2カ月は監督とコーチという立場ではなかなか聞けなかったことを質問できたり、マネジメントの裏側までしっかり話を聞くことができた。ある意味、新鮮な時間でしたし、突然ではなく、昨年のうちに引き継ぐ時間をもらえたことはとても大きかったですね。
――そんな黒田さんは今季、町田をJ1へ導きました。
正木 プロの監督1年目でいきなりJ1昇格、J2優勝は凄いとしか言いようがありませんよね。プロフェッショナルの選手を相手にしても、ブレないチームマネジメントができる。スタッフ、選手が同じ方向を見て、やるべきことをきちんとやるという姿勢が見ていてもひしひしと伝わってきています。
「我々も勝ち続けないといけない」
――青森山田も負けじと高円宮杯プレミアリーグEASTを2年ぶりに優勝。先日はファイナルも制して、4年ぶり3度目の日本一を手にしました。
正木 ありがとうございます。町田の躍進は刺激になっていました。コーチ時代からずっと、一番負けたくない人が黒田前監督で、それは張り合うとかではなく、尊敬している師だからこそ。自分を成長させてもらえる“最高のライバル”なんです。今、こうして別々の立場になりましたが、町田が勝ち続けているのならば、我々も勝ち続けないといけない。サッカー人として負けられないですから。