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「“神の一声”がなくなった」黒田剛が去った青森山田はどう変わった? “元10番”の新監督が語る、名門の重圧と意地「一番負けたくない人」 

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安藤隆人

安藤隆人Takahito Ando

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photograph byYohei Osada/AFLO SPORT

posted2023/12/30 11:07

「“神の一声”がなくなった」黒田剛が去った青森山田はどう変わった? “元10番”の新監督が語る、名門の重圧と意地「一番負けたくない人」<Number Web> photograph by Yohei Osada/AFLO SPORT

黒田剛前監督が退任し、正木昌宣監督のもと新体制でスタートした青森山田(写真は昨年度大会)

正木 選手の言葉から学ぶことはとても多いので、監督になったからといって変に壁を作ったりはしません。ただ、コーチ時代は必要な部分をピックアップして監督に伝える役目だったので、葛藤や悩みもざっくばらんに共有できました。今は直接的な立場になった分、ストレートに届きづらくなっているとは思います。でも、その分、コーチとのコミュニケーションは密になりましたし、何よりそこから伝わる選手の声により敏感になりました。「なるほど、そういう意見もあるのか」と感じることは増えた気がします。

――ピッチ内外で求められることは増えたと思いますが、サッカーの指導に変化はありましたか?

正木 コーチ時代から練習メニューやある程度の戦い方を決めて提示していたので、そこまで大きく役割は変わっていません。ただ、いわゆる“神の一声”がなくなったのは大きいですね。

――神の一声……それはつまり、黒田さんの存在。

正木 私にとっては高校時代の恩師であり、大学を卒業したばかりの社会人1年目の若者をコーチにしてもらった恩人でもあります。ここ数年はヘッドコーチという立場をやらせてもらいましたが、いざ自分が監督の立場になってみると、その凄さがますます理解できるようになりました。

――黒田さんの凄さとは?

正木 人を“やる気”にさせる言葉遣いがうまいんです。時に褒めたり、時には厳しく、言葉の選び方やタイミングの巧みさが凄まじい。選手やスタッフのやる気スイッチを入れるのがうまいですね。また、組織のトップにいながら、仕事を分担し、それぞれに責任を与えているからこそ、穴の少ない組織になっていった。上に立てば立つほど、任せることは難しくなります。監督になったからこそわかった部分でもありますが、そういうことをできる人は少ないと思います。

――監督になって、その辺りは黒田さんから学んだことを活かせているということですね。

正木 そうですね。私自身がそこまで能力に長けた指導者ではないですし、欠けている部分がある。自分のストロングポイントはサッカーの現場での仕事なので、それ以外の映像分析や事務処理などは長けているスタッフを信じて委ねることは意識しています。

第一声は「おめでとうございます」

――「不毛の地」と言われた雪国で一からチームを作り上げてきた黒田さんが退任することは、大きな転換期だと思います。最初に退任すると聞いた時は、どう感じていましたか。

正木 本人から直接、町田ゼルビアの監督に就任すると聞きました。驚きというより、「ついに実現したんだ」という気持ちでした。19年間、一緒に指導させてもらい、言葉にこそしていませんが、いつかはプロの世界にチャレンジしたいんだろうなとは感じていて。ついにその時が来たのか、と思ったので、私の第一声は「おめでとうございます」でした。

――驚かされたのは、選手権本大会から正木さんに“監督”を託したことでした。

【次ページ】 「まさか直後の選手権も…青天の霹靂でした」

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