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ボクシングPRESSBACK NUMBER
「まるでディナー帰りのような顔」井上尚弥の“無傷”に英国人記者また言葉失う…ガードの上から衝撃KOパンチ「この階級に敵いない」
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byTakuya Sugiyama
posted2023/12/28 11:07
10ラウンドを戦い抜いた直後とは思えないほど、“無傷の顔”で会見に登場した井上尚弥
最後のKOシーンは“現役最高級のフィニッシャー”らしいものでしたね。それまでに十分に破壊工作が行われたビルが、最後の一撃で崩れ落ちたかのようなノックアウト。見た目的にはワンパンチKOに分類されるのかもしれませんが、実際にはそれまでのダメージの蓄積があったからこそでしょう。
そこに至るまでにタパレスはすでに十分すぎるほどに傷ついていました。4回のダウンシーンを経て、タパレスが一旦回復した後だったからこそ、余計に印象的なKOになったと思います。個人的に私は井上こそが“現代のベストフィニッシャー”と認識していますが、そのヒストリーにまた新たな1ページが加わったのです。
「ポイントを奪われたのはドネア戦以来」
正直に言いますが、私は戦前、井上はタパレスをもっと早く仕留めてしまうと予想していました。井上を過大評価したのではなく、タパレスを過小評価していたのでしょう。これまでもタパレスのキャリアを眺めてきましたが、フットワークの乏しさがゆえに井上にとってお誂え向きの相手だと考えていたのです。
ところがタパレスは可能な限り被弾を避けるべく、賢明な戦い方をしました。序盤からガードを高く上げて構え、あれでは井上はカウンターを取るのが難しかったのは事実です。4回、タパレスがパンチを出し始めるや否や、ダウンを奪われてしまいました。井上相手に攻撃しようとすると、ああいったリスクを負うことになるのです。
それでもタパレスはそこから打ち返し、重心を後ろにして構えることによって立て直しました。井上の攻撃を巧みに制限した7、8回、私はタパレスにラウンドを与えました。井上の試合で最後に相手に2ラウンドもポイントを与えたのがいつだったのか、簡単には思い出せません。おそらく2019年11月、ノニト・ドネア(フィリピン)との第1戦以来。それほどの頑張りを見せたタパレスを評価しなければいけません。