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井上尚弥のせいで海外メディアが激論?「私は年間MVPには推さないが…」前代未聞の“PFP1位が2人”説も…英国人記者が重要な証言

posted2023/12/28 11:08

 
井上尚弥のせいで海外メディアが激論?「私は年間MVPには推さないが…」前代未聞の“PFP1位が2人”説も…英国人記者が重要な証言<Number Web> photograph by Hiroaki Yamaguchi

覚悟を決めてリングに向かう井上尚弥。試合後、スーパーバンタム級での防衛戦へ意欲を示した

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杉浦大介

杉浦大介Daisuke Sugiura

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Hiroaki Yamaguchi

 引き続き、リングマガジンの元編集人(マネージング・エディター)であり、現在はスポーティングニュースで健筆を振るうイギリス人ライター、トム・グレイ氏による井上尚弥評をご覧ください。後編では、リングマガジン、スポーティングニュースの両方でパウンド・フォー・パウンド・ランキング(PFP)選定委員を務めるグレイ氏の貴重な証言が……。以下、グレイ氏の1人語り【全2回の後編/前編から読む】。

 10点満点で採点するなら、マーロン・タパレス戦の井上尚弥には8点をつけます。これまででベストの出来ではなかったですが、今回も優れたパフォーマンス。7月のスティーブン・フルトン戦の井上のボクシングは私が見る限り、これまでで最高でした。スーパーバンタム級への昇級初戦、しかもアウトボクシングの能力に秀でたフルトンには多少苦戦するのかと思われたにもかかわらず、完璧に勝ってしまったのですから。

 あの試合は9.5点か、10点満点がふさわしい強さでした。そのレベルではなかったとしても、それでも今回もパウンド・フォー・パウンドのトップを争うにふさわしい力量を誇示してくれたと考えています。 

「“年間MVP”選考は難航している」

 2023年はフルトン、タパレスという2人の2冠王者をそれぞれKOしたことで、井上は年間最優秀選手(Fighter of the Year)の有力候補になります。今年の選考は極めて難しいものになります。あくまで個人的な意見ですが、私はリングマガジンのFighter of the Yearにはテレンス・クロフォード(アメリカ)を推すつもりです。

 今年7月、エロール・スペンスJr.(アメリカ)とのパウンド・フォー・パウンドでトップ5に入る選手同士の対戦で、事前は50/50と見られながら、クロフォードは圧巻なまでの強さで9回TKO勝ちを収めました。ウェルター級の4冠がかかった戦いを、あれほどのクオリティで制したクロフォードは本当に強かった。大げさではなく、史上最高のボクサーと称されたシュガー・レイ・ロビンソン(アメリカ)のような名前が比較対象に出ても不思議ではないほどのパフォーマンスでした。2023年のクロフォードは1試合のみですが、その一戦は近年最大級の期待感に包まれて行われたメガファイトだったという背景は考慮されなければいけないと考えます。

 とはいえ、もしも井上を推す人が過半数だったとしても、私は激しく議論するつもりはありません。フルトン、タパレスをどちらもKOし、この短期間で4冠制覇したことはセンセーショナルな偉業に違いありません。

【次ページ】 PFPも激しい議論が「どっちも1位?」

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