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井上尚弥「ディフェンス面が思ったよりすごくて…」タパレスの健闘は“階級の壁”によるものなのか? 当日体重は「井上より2kg以上重かった」
posted2023/12/27 17:04
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Hiroaki Yamaguchi
井上尚弥がまたしても偉業を達成――。12月26日、東京・有明アリーナで行われたスーパーバンタム級4団体王座統一戦は、WBC・WBO王者の井上(大橋)がWBA・IBF王者のマーロン・タパレス(フィリピン)に10回1分2秒KO勝ち。昨年のバンタム級に続き、史上2人目となる2階級での4団体統一に成功した。
「ディフェンス面が思ったよりすごくて…」
戦前の予想は井上の圧倒的有利。それは両王者のたどってきた道のりを考えればやむを得ない。常に圧倒的な強さを見せつけ、4階級制覇を成し遂げた井上に対し、タパレスは2階級制覇王者とはいえ、3つの負けを経験、「這い上がってきた」という言葉がよく似合うチャンピオンだ。2団体のタイトルを手にした4月のムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)戦は、不利を予想されながら試合巧者ぶりを発揮し、2-1判定で勝利をさらうという内容だった。
サウスポーのタパレスはアフマダリエフ戦と同じように腰を落とし、ガードをしっかり固め、やや後ろ重心で井上と対峙した。足はあまり動かさず、下がらずにリングの中央で井上と勝負する。明確な意思が感じられた。
このスタイルはなかなか効果的だったと言えるだろう。井上は試合後、次のように明かしている。
「(相手の力を)過大評価していたのは攻撃力。そこは想定していた感じで進められたけど、ディフェンス面が思ったよりすごくて、意外と当てられなかった」
井上は対戦相手を決して侮らない。相手は過去の試合映像から伝わる以上の力で自分に向かってくると想定している。それを井上は「過大評価する」と表現する。今回もタパレスの力を最大限に見積もって準備を進めてきた。しかしタパレスのディフェンス力は、その想像を超えてきたのだという。
一方、「日本に勝ちに来た」と繰り返し強調していたタパレスは「井上のスピードが速く、追いつけなかった」と明かした。言うまでもなく、勝つためには守るだけでなく、攻めなければならない。タパレスは井上のアタックをそれなりに防ぎつつ、攻撃というところで苦しんでいた。両者はリングで対峙しながら、互いに「一筋縄ではいかないな」と感じていたのである。