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「藤井聡太さんが新しい勝ち方を見せてくれた」“AI最善でも絶対指せない手”を…藤井将棋・進化の深層「羽生善治先生との王将戦もです」
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byAsami Enomoto/Keiji Ishikawa
posted2023/12/30 06:03
2023年も冴えに冴えわたった藤井聡太八冠の将棋。高見泰地七段が驚いた「新しい勝ち方」とは
「おふたりとも初めての番勝負の中で、絶対王者のような藤井さん相手に堂々と戦っているなと感じました。それとともに、あくまでも推測ですが、1局ごとに藤井将棋の凄みを見せつけられる感覚だったのではないでしょうか。何度も対局して、長時間にわたって盤を挟む対局者にしかわからない境地があって……先ほど挙げた〈8六玉〉などは佐々木大地さんからしてみれば、残像として残る一例ではないかと」
――伊藤七段が挑戦した竜王戦は、同学年の21歳同士が棋界最高峰のタイトル戦で相まみえました。年上の棋士として、この構図はどう映っていましたか?
「〈世代的な転換点〉になるかどうか、注目しています。伊藤さんが今期竜王戦の挑戦者となったのはポジティブな驚きでした。ここから常にタイトル戦に出てくるようになったら本物ですし、将棋史を振り返っても〈ああ、この対局が歴史の動くきっかけだったか〉という出来事がありますからね。ただ伊藤さんの少し上の年齢にあたる佐々木大地さんらの世代、そして豊島将之九段や永瀬拓矢九段、菅井竜也八段、加えて一応私などの世代もいますので、激しさが増すのではと」(※編集註:取材日の後、伊藤は棋王戦挑戦権を獲得した)
王将戦は羽生先生、藤井さんともに大きな経験になったのでは
――世代論で言えば、40~50代の棋士もまた、2023年に存在感を見せています。その象徴的存在と言えるのは2023年、会長に就任された羽生善治九段ではないでしょうか。
「私自身、小さい頃にずっとスターとして見て憧れていた存在でしたし、その羽生先生が将棋連盟の顔になった。佐藤康光前会長にもお世話になりましたが、本当に多忙で大変だろうなと思う反面、心強い部分もあります」
――盤上についてどのようにお感じでしょうか。勝率は6割台前後、公式戦で渡辺明九段、豊島九段、永瀬九段らにも勝利しています。
「王将戦リーグ戦でも堂々と戦われて、11月に新設された『達人戦』で優勝するなど相変わらずの強さを感じます」
――達人戦では優勝した羽生九段に対して、羽生会長が表彰状を渡す「セルフ表彰式」というシーンも話題になりました。