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プロ野球PRESSBACK NUMBER
高卒わずか3年“まさかの戦力外“あの有望DeNA選手…ファン疑問「なぜ引退したのか」取材を断っていた田部隼人が初めて語る“本当の理由”
text by
井上幸太Kota Inoue
photograph bySankei Shimbun
posted2023/12/28 06:03
2019年ドラフト会議でDeNAからドラフト5位指名を受けた田部隼人。右は当時監督のアレックス・ラミレス
「球団として、現時点では一軍に上がる実力がないと判断した」
この年から「現役ドラフト」がスタートされたため、例年よりも保留者名簿の確定が遅れ、フェニックス・リーグ開始後というタイミングの通達になったことへの謝意と、素行などには何ら問題はなかったことも伝えられた。球団側としては田部が育成選手として残ってくれると予想しての通告だったのかもしれない。だが、本人は納得できなかった。
引退の理由「ガンっとモチベーションが…」
この時点で、田部には3つの選択肢があった。
1つめは、育成選手になるがDeNAに残留すること。2つめが11月に開催される「12球団合同トライアウト」に参加し、支配下契約での他球団移籍を模索すること。そして3つめは、育成契約への移行を断り、現役を引退すること。
球団からは「回答まで1週間待つから、考えてほしい」と申し添えられた。田部が当時の心境を振り返る。
「自分としては、一軍でやれる可能性が見えてきて、そのための課題も明確になっていた。でも、球団からは来年一軍の戦力にはならない、昇格の可能性はないと判断されている。そのギャップでガンっとモチベーションが下がってしまって……」
信頼のおける人々に自分の偽らざる思いを吐露した。実力を認め、「DeNAに残らないにしても、トライアウトは受験したほうがいい」と勧める者も少なくなかった。それでも、宮崎に乗り込んだ当初に湧き上がっていた来季への活力は戻ってこなかった。
スポーツ界でしばしば使われる「心技体」。非常に的を射た言葉である。
3つの要素のどれかが欠けると、アスリートは力を発揮することはできない。磨かれた技術も、鍛え抜かれたフィジカルも、心がたぎらなければ生きてこない。
心技体の「心」が大きく削がれてしまった以上、DeNAに残留して再び支配下選手を目指す未来も、「自分のような実績のないプロ野球選手にとってはギャンブルのようなもの」というトライアウトで移籍先を勝ち取る未来も描けなかった。
最終的に回答期限を待たず、通告から5日後に現役引退の意向を伝えた。
〈つづく〉