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井上尚弥とタパレスの戦力差はどれほどあるのか? “パンチを予見するカメラマン”が4団体統一戦を大胆予想「前半はフルトンより危険。だが…」
text by
福田直樹Naoki Fukuda
photograph byNaoki Fukuda
posted2023/12/23 17:01
公開練習での井上尚弥とマーロン・タパレス。“パンチを予見する男”と称されるカメラマンの福田直樹氏が、両者の戦力差を分析する
「前半のうちはフルトンより危険」一発のあるタパレス
考えてみれば、私自身は今まで不思議なほどタパレスに縁がなかったと言える。彼が日本で戦った時には国外にいたし、タパレスが主戦場をアメリカに移す前にすれ違いで日本へ帰国してきたから、実際には一度もタパレスのファイトを撮った記憶がない。
そのため細かい戦術やパンチの質感などは本番で確認するしかないのだが、数年分の動画を見る限り、確かに最近のタパレスはキャリアの中で最も充実しているようだ。タイミングと距離感に優れていて、離れたポジションから振り抜く左フックや意表をつく右カウンター、アッパーにインパクトがある。経験とともに粗さが薄れ、右ジャブでしっかりと試合を組み立てられるようにもなった。
守りについても、体を巧みにスライドさせながらブロックしていくので、被弾は意外と少なめだ。パワーがある分、前半のうちはフルトンより危険かもしれない。
それでも井上尚弥との戦力差は歴然
しかし、それでも井上のスペシャルな戦力と比較してしまうと、やはりすべての要素で大きく見劣りするのは言うまでもない。しかも井上はサウスポーの相手に、めっぽう強いときている。開始直後の探り合いはスリリングだと思うが、立ち上がりのジャブの交換でまずはスピードと威力、精度の差がはっきり出る気がする。
リードブローを当てにくいとされるサウスポーに対しても、ハードなジャブを難なく打ち込めるのが井上の特徴だ。先日の練習でもジャブの軌道と伸び、踏み込むポイントをチェックしながら、丹念にシャドーを繰り返していた。
序盤でその井上がタパレスのボクシングをある程度見切ってしまったら、以後は一方的になるかもしれない。その確率は低くないと思う。強豪ムロジョン・アフマダリエフを攻略した底力は侮れないが、タパレスは決して鉄壁とはいえないし、スタミナや耐久力に不安がある。結果的には、ボディブローで仕留めた同じフィリピン人サウスポー、マイケル・ダスマリナスとの試合(井上の3ラウンドTKO勝ち)を少し長めにした感じの展開になるのではないだろうか。井上の最大の武器、左ボディフックの標的となる右半身が絶えず前面にさらされているというのも、サウスポーの選手にとっては精神的に負担になりそうだ。