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「あごが外れて…ぶらんぶらんと」161cmの伝説的ボクサーが“ボコボコにされた”世界戦「普通の人なら失神している」八重樫東の衝撃

posted2023/12/24 11:03

 
「あごが外れて…ぶらんぶらんと」161cmの伝説的ボクサーが“ボコボコにされた”世界戦「普通の人なら失神している」八重樫東の衝撃<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

世界3階級制覇を成し遂げ、2020年に引退した八重樫東。現在は井上尚弥のフィジカルトレーナーを務める

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森合正範

森合正範Masanori Moriai

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Yuki Suenaga

「殴られても目が塞がっても前に出てパンチを放つ」「関西の最高視聴率29.1%、関東で22.7%」。伝説的な試合を多く生み、2020年に引退した元世界3階級王者・八重樫東。「あごが外れた」最初の世界タイトル戦から井上尚弥のフィジカルトレーナーになるまで……“激闘王”が半生を語った。(全4回の1回目)

 ◆◆◆

 観客の前に姿を現した瞬間、大歓声が降り注いできた。2014年9月5日、東京・代々木第二体育館。ロマゴンこと、ローマン・ゴンサレスとの対戦。試合が始まる前だというのに、八重樫東は会場の熱気を感じていた。

「あまり聞いたことがないくらい、歓声がゴーッとなっていて、なんかすごいな、盛り上がっているなと思いました。あの入場は今でも覚えています」

 勇者を称え、後押しするような拍手。八重樫は常に最強から逃げず、果敢に立ち向かい、観る者の心を震わせてきた。

「みんな、僕の思い出の試合って、ロマゴン戦か、井岡(一翔)戦。どっちも負けているんですけど、負けを恐れず向かっていく姿というのは、人生の中でみんなが共感できる部分なのかもしれませんね」

 ボクシング人生を振り返り、そう言って笑った。

「あごが外れた」最初の世界タイトル戦

「呪われているのでは」と思うほど、キャリア序盤はけがに苦しんだ。

 2005年3月26日、22歳でプロデビュー。1回KOで飾った。5戦目で日本最速となる東洋太平洋ミニマム級王座を獲得し、初防衛に成功した後だった。

「世界戦いけるか?」

 所属ジムの会長、大橋秀行から声をかけられた。

「僕は基本的に『ノー』とは言わないんで『わかりました』という感じでしたね」

 2007年6月4日、パシフィコ横浜。辰吉丈一郎、名城信男の持つプロ8戦目を上回る7戦目での国内最速(当時)を狙い、世界に挑んだ。相手はWBCミニマム級王者のイーグル京和。安定感があり、右の強打が武器のタイ人王者だった。

 2回。偶然のバッティングで相手の頭があごに直撃した。

「あごが外れたかな。終わったら治せばいいや」

 そう思ったが、次第にあごがぶらんぶらんと揺れてくる。パンチを食らえば激痛が走る。

【次ページ】 医師が言った「普通の人なら失神している」

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