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スポーツ百珍BACK NUMBER
「将棋は自分で完結、お笑いは他者の評価」「ネタ作りは研究以上にキツい」けど…異色講師・栗尾軍馬34歳が感じた“盤上と芸人の共通点”
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byShigeki Yamamoto
posted2023/12/25 17:01
将棋奨励会とお笑い芸人。2つの道を歩んだからこそ栗尾軍馬さんが感じたことは?
10月18日に放送された「アンタウォッチマン」の藤井八冠誕生の特集番組である。
「盤面を作ったり、ナレーションの言い回しがあっているかのチェックを担当しました。大盤解説で藤井先生が話した符号や将棋用語について、ナレーションの方が〈金と銀、どっちなの?〉など理解できないことがあるんです。それは藤井先生の頭の回転がとてつもなく速い証拠でもあるのですが(笑)。そこで〈この局面では銀は打てないから金だな〉と僕が確認して、文字起こしをしていたんです」
さらには現在、甲斐とともに将棋マンガ『恋は包むように寄せよ』も監修するなど、その幅を広げている。当初思い描いたルートとは違うかもしれない。それでも将棋講師、テレビやマンガなどで表現される将棋を支える1人として、培ってきたものを活かしていると言えるだろう。
藤井八冠を引き合いに、子供たちのやる気を
都内各地にて開催されている『KAI将棋教室』で栗尾は、子供たちに物腰柔らかく教えていた。「コレはいい手だね!」と勇敢に9筋へと角を出る一手を褒めたり、時には藤井聡太竜王・名人らの名前を引き合いに出しながら子供たちのやる気を導きつつ、さまざまな観点をチェックする。
奨励会とお笑いの日々を経て、今は将棋講師として歩む。転身というターニングポイントがあったとはいえ、初めて将棋に触れた時に栗尾が楽しいと思った〈初手〉からつながる人生なのである。
<第1回から続く>