濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
覆面女子レスラーにリングアナ…プロレス兼業の女性芸人が語る“ギャップ以上の面白さ”「M-1がなかったらお笑いをやってなかったかも」《インタビュー》
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2023/12/23 17:00
芸人グループ「ショウガールズ」のリーダーでリングアナの野中美智子(右)と、お笑いコンビ「ネバーギブアップ」のHARUKAZE(中央)とおおのまりあ
「ブスとかデブとイジるような笑いはなくなりましたね」
おおのによると、女性の芸人は「ドキュメンタリー性」が強いという。
「いったんお笑いから離れたけど、結婚・出産を経て戻ってくる人もいるんですよ。それがネタにも反映される。お子さんと一緒にネタをやったり。人生模様を感じやすいと言いますか」
女性芸人が集まるライブは、楽屋も和気あいあいとしているそうだ。お笑いはまだまだ男社会。女性芸人というコミュニティの中で支え合い、称え合う雰囲気がある。ネタの潮流も変わってきた。
「女芸人のネタでブスとかデブ、モテないことをイジるような笑いはなくなりましたね。規制されたというより、単にウケないからみんなやらなくなった。ある時期から一気にそうなった感覚があります。THE Wが始まったタイミングに近いのかな」(おおの)
HARUKAZEも、明るく肯定的な雰囲気の中で伸び伸びと成長してきた。
「でも賞レースの時はクソほど緊張しますね。プロレスの試合前と同じ感じです。そういうところも共通点なんですかね」
“兼業”だからこその魅力
お笑いもまた“闘い”ということか。しかしそういう面ばかりではないとおおのが補足する。
「賞レース、特にM-1は独自の競技。今は一周して変わってきましたが、ずっと明文化されてない採点基準があると言われてきたんですよ。つかみは開始何秒以内にとか、ボケの数とか。その厳格さは、普段のお笑いライブとは別もの。エンターテインメントなので、気軽に見に来て笑ってほしいですね」
HARUKAZEは「いろんな面でお笑いのほうが自由かも」と言う。プロレスはケガがつきものだし、最悪、命の危険もある。だから指導者について基礎から教わる必要があるのだ。
だがお笑いは未経験でも賞レースにエントリーできる。間口の広さが風通しの良さにつながる。女子プロレスラー芸人も肩身が狭い思いをしないし、それどころかプロレスにもいい影響がある。
ショウガールズもネバーギブアップも“兼業”であることに魅力と強みがある。正直に言うと、HARUKAZEがここまで強力な天然で、抜群のフラがあるとは思わなかった。お笑いライブで見たから分かったことだ。それは野中のリーダーシップ、プロデュース力にも言えること。
「お笑いというジャンルで新しい可能性が出てくることもある。今のメンバーを見ていると、売れないはずがないって信じられるんですよ」(野中)
新たなチャレンジの場としても機能しているのが、今のお笑いの世界なのだろう。競争率は高いが、頑張りがいは間違いなくある。