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「奨励会試験」を2度失敗、27歳のSEはそれでもプロ棋士を目指した…小山怜央が振り返る「サラリーマン時代」
text by
小山怜央Reo Koyama
photograph byJIJI PRESS
posted2023/12/24 06:05
今年4月にプロ棋士となった小山怜央。本人が転機となったコロナ禍と会社を退職するまでを振り返る
しかしサラリーマン生活をしながらでは難しいだろうとも思った。これからコロナが終息して、リモートワークが終わりになれば、また通勤電車に乗っての勤務となる。そうすれば将棋に使える時間は1日多くても数時間。それでは無理だろう。
父に退職を相談すると…
私の中で、会社を辞める選択肢が浮かび上がってきた。
こんなとき私はいつも父に相談してきた。父なら背中を押してくれるのではないだろうか。想像通り、父は前向きなことで仕事を辞めるのならばいいのではないかと言ってくれた。そしてリコー将棋部の主将であった細川さんにも相談したが、私の挑戦を応援してくれた。もちろん仕事を辞めた理由には、後ろ向きな理由もないわけではない。システムエンジニアという仕事は、日々、新しい資格の勉強をするなど時代に対応しなければならない。つまらない仕事ではなかったが、将棋ほど興味を持てるかといえばそうでもなかった。
やりたいことがあるのならば、挑戦してもいいのではないか。その思いは日に日に強くなった。
こうして私は27歳のとき、3年勤めた会社を辞める決断をした。
最後に出社したのは2021年の4月16日。この日、上司と一緒に社内に遅くまで残り、残務整理をした。上司は私の挑戦を応援してくれていた。改めて、私は恵まれているなと思いながら、3年間、お世話になったリコーITソリューションズを去った。
あと2勝すれば、編入試験の資格を得ることができる
まずは棋士編入試験の資格を得なければならない。そんななか、いきなり大きなチャンスが巡ってきた。