濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
武尊「天心選手に負けたのは…」ベトナムに学校建設、自炊弁当…THE MATCH“あの敗戦”後の日々「1日でも早くロッタンとやりたかった」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2023/12/24 11:02
ロッタン戦が発表された会見、その楽屋でインタビューに答えた武尊
ロッタンとの試合は、1月28日のONE日本大会でマッチメイクされた。参戦一発目でいきなり対戦だ。ONEは階級・計量に関して独自のルールがある。選手の健康を考慮して設定体重が重く、その分サウナなどでの“水抜き”による大幅な減量が禁じられているのだ(計量後に尿比重を測定し体内の水分を確認する)。ロッタン戦は大一番だけに、ONEで1試合挟んで慣れておくことも重要に思える。だが武尊はそうしなかった。ロッタン戦直行を望み、運営もそれに応えた。
「1試合挟もうとは思わなかったです。試合より練習での消耗が激しくて、いつ壊れてもおかしくないような状態なので。だから1日でも早くロッタンとやりたかった。ONE初戦でやらせてもらえるのはありがたいです」
ロッタンとの試合は5ラウンド。K-1や那須川戦は3ラウンド制だった。スタミナやペース配分も変わってくる。その意味で、フランスでの復帰戦で5ラウンドマッチを経験しておいたのは大きかった。攻めまくった上での最終ラウンドKO勝ち。長丁場を苦にしないどころか「スタイル的にそっちのほうが向いてると思います」とも。
「僕は身体能力で闘ってないんですよ。身体能力で僕より上の選手はたくさんいます。練習でも、そういう選手に最初はやられる。でも何回もやるうちに勝てるようになるんです。学習能力というか、相手が何をしてくるか見極める力が僕の持ち味だと思っていて。だから長いラウンドのほうがいいし、これまでも試合後半のほうが相手の攻撃をもらってないんです」
「人間の限界を超えられる自信があるんです」
相手の攻撃を攻防の中で分析しつつ、序盤から攻めの姿勢は崩さない。怯むということがない。一発で失神させるというだけでなく、相手を根負けさせるような闘いも得意だ。
「デビューした時から“気持ちでは絶対に誰にも負けない”と言ってるのは、そういう部分なんです。相手を根負けさせるようなメンタル勝負は、僕の一番の強み。負けず嫌いってことなんでしょうけど、試合での痛さ、苦しさは誰よりも我慢できるんです。
痛みとか苦しみが限界にくるとダウン、KOになる。僕にはその限界がないのかなって。倒れても立ち上がるし骨が折れても殴るし。人間の限界を超えられる自信があるんです。だからケガするんですけど(苦笑)。死んでも負けたくないんですよ」
そこまでやる武尊だから、もう“本命”としか試合ができないのだ。試合になれば誰が相手でも100%の練習をして臨む。リングでは限界を超えるほどの我慢ができる。ロッタン戦の前に1試合となったら、大げさでなく体がもたないのだろう。