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武尊「天心選手に負けたのは…」ベトナムに学校建設、自炊弁当…THE MATCH“あの敗戦”後の日々「1日でも早くロッタンとやりたかった」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2023/12/24 11:02
ロッタン戦が発表された会見、その楽屋でインタビューに答えた武尊
ロサンゼルスで練習する理由
武尊はフランスでの試合を終えると、すぐ“ロッタン戦モードに入ったという。すでにタイとアメリカで合宿を行なった。海外、特にアメリカでの練習は武尊にとって欠かせないものになっている。
「LAで練習するんですけど、ムエタイの選手もいればボクサーもいて、いろんなタイプの選手とスパーリングできるんですよ。体のケアも移動なしで、ジムでできるのでコンディションもいい。LAは湿気が少ないので汗をかきにくいというメリットもありますね。汗をかかないと疲労も少ない。日本だと2、3時間しかできない内容のトレーニングが4、5時間できるんです」
カリフォルニアの太陽はメンタル的にもプラスだ。10年前にインタビューした時「ボディガードをつけないと街を歩けないくらいになりたい」と夢を語っていた。実際に日本で最も有名な格闘家の1人になってみると、本当に街を歩けなくなっていた。
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「出かける時はいつも帽子をかぶって。そもそも昼間に出歩くことができないような生活ですから」
LAではたっぷりと陽光を浴びる。声をかけられることもない。とにかく格闘技だけに集中できて、それが心にも体にもいい影響を与えてくれる。休むことも覚えたという。「今までそれで失敗してきたので」と武尊。
「オーバーワークにならないように、アクティブレストも心がけてますね。ジムには行くんですけど、軽いミット打ちだけにしたり。ストレッチのようなミットって言うんですかね。筋疲労につながらない、血流をよくする程度の運動です」
記者会見に持ってきた「自炊弁当」
それも含めてジムには毎日行くそうだ。日本でもアメリカでも、食事は基本的に自炊。ロッタン戦発表の記者会見でも、楽屋に弁当を持参していた。
休むことも含めて、すべてが格闘技のための生活。今はロッタンに勝つための生活だ。
「自分が持ってるエネルギーが電池だとしたら、残量を1月28日に使い切るイメージですね。本当に限界ギリギリのところでやってます」
負けたら引退、常にそう公言してきた。今回に関しては勝った先のことも考えられない。新たなモチベーションが湧くのかどうかも想像できない。
「だから1月28日より先の予定は何も入れてないです。勝って燃え尽きる。そういう覚悟をしてます」
今回のインタビューでの言葉を、筆者はそのまま受け止めたいと思う。武尊は本当にここまでの覚悟ができる男で、それを過去の試合でも見せてきたからだ。ロッタンという最高の相手を得て、燃えかすなど残るはずもない。