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「駄目だったら、終わり…決断するのが怖かった」プロ5年目で決死のフォーム改造、DeNA知野直人24歳が「必要とされる幸せ」を感じるまで
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byJIJI PRESS
posted2023/12/18 11:03
現在24歳の知野直人。フォーム改造の決断に踏み切った2023シーズンの歩みを振り返る
「あの時はいろいろ見えてくるものがあったというか、走者として技術が一段も二段も上がった感じがしたんです。また代走で出て、ホームを踏んで還ってくると、ベンチもファンも喜んでくれる。僕自身、代走でホームを踏んであんなにうれしかったのは初めてのことでした。大げさですけど、生きている価値というか、野球をやっている意味っていうのか、本当に楽しかったんですよね」
藤田一也からのアドバイス
そう言うと知野は、安堵した様子で次のように続けるのだ。
「僕は『走攻守』全部でやっていかなければいけない立場。だから、ちょっとだけ気持ちの方も楽になったんですよ」
チームプレーに徹し、勝利に貢献する喜び。これまでは、どちらかといえばベクトルは自分の方だけに向いていた。結果を出さなければ生き残れないから当然だ。しかし、この世界で生きていくための方法論は他にもある。それを気づかせてくれたのが藤田一也(現・ファーム育成野手コーチ)だった。
夏場のこと、俊足の神里和毅が怪我をして離脱し、足を武器として使えそうな一軍の選手は知野をはじめ数名しかいなかった。このタイミングで自分は何をすればいいのか、アドバイスを藤田に求めると次のように言われた。
「おまえがレギュラーを獲りたい気持ちはすごくわかるし、獲れる素質はあるよ。けど今は役割をちゃんと全うした方が自分のためだ」
欲は心の内に宿し、まずはやるべきことをやる。
「(藤田)一也さんに言われてそうだなって。そこから切り替えることができたんです」
あれは動画で何度も見てしまうシーン
昨年10年ぶりにDeNAに復帰した藤田と、ともに過ごしたのはわずか2シーズンだったが、短期間であっても若い選手たちに与えた影響は大きい。知野もその一人であり、藤田の大きな背中を追った。
「一也さんの野球に対する姿勢を見て、本当に自分自身変わったんですよ。とにかく準備の仕方は勉強になりましたし、真似をすることで、自分にいい効果もありました。やっぱり一也さんはすごいっすよ」
そして、打撃におけるインパクトといえば、9月3日の巨人戦(横浜スタジアム)における、代打逆転満塁ホームランだろう。