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「駄目だったら、終わり…決断するのが怖かった」プロ5年目で決死のフォーム改造、DeNA知野直人24歳が「必要とされる幸せ」を感じるまで
posted2023/12/18 11:03
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph by
JIJI PRESS
ここぞの場面のインパクト――。
入団5年目、横浜DeNAベイスターズの知野直人は、今季を振り返り次のように語った。
「本当に実りある1年だったというか、プロになって初めて“知野直人”という選手の存在意義を見せられたのかなって」
充足感のある声の響き。そう言うと知野は、照れたように笑った。
本人が今季感じた手応え
24歳の内野のユーティリティープレイヤー。今季は代打と代走が主な仕事だったが、自分としてはどのような部分で、アピールできたと考えているのか。
「数少ないチャンスでしたが、やっぱりまずは走塁の部分ですね」
地味ではあるが重要なスキル。知野は走塁に関し、プロになって初めて味わった感覚があったという。それは9月29日の阪神戦(横浜スタジアム)、4対3で迎えた8回裏、無死から四球で出塁した藤田一也に代わり塁に立った時のことだ。勝てばクライマックスシリーズ進出が決まる一戦。知野の頭の中にあったのは「自分の仕事は、ホームに還ること」、ただそれだけだった。状況を俯瞰し、神経を研ぎ澄ませた。
次の林琢真の打席、投手のブルワーは4球目をワンバウンドさせてしまいワイルドピッチ。知野はすかさず二塁へと進塁した。さらに7球目のスライダーが林の止めたバットに当たって一塁ゴロとなったが、知野は躊躇せずに三塁を陥れた。隙のない走塁だった。
いろいろ見えてくるものがあった
1死、三塁。続く打者は関根大気。内野は得点を警戒し、前進守備。関根は5球目のスライダーを詰まらせ、ボールは転々とセカンドへ。すでにゴロゴーでスタートを切っていた知野。セカンドの中野拓夢はダッシュで捕球しバックホームをするが、知野は頭からホームに滑り込みセーフ。知野の状況判断と積極的な走塁により、DeNAはノーヒットで貴重な追加点を挙げることができた。知野は確実に足でインパクトを残した。