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青学大“じつは優勝が期待されていない代”から急激に強く…何が?「寮内での飲酒禁止」「朝練は5時30分から」箱根駅伝“あの初優勝”の真実
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byTakashi Shimizu
posted2023/12/31 11:03
青学大“期待されていない代”が語る箱根駅伝初優勝の裏側
神野のタイムは、区間新記録となる1時間16分15秒。2位の明治大学に4分59秒もの大差をつけた。翌日の復路に向け、絶対的と言えるリードだった。髙木が言う。
「チームの予想通りだったんですけど、こんなにハマるとは。スゴ!って感じでした」
“優勝は期待されていなかった”世代
さかのぼること1年前――。箱根駅伝が終わり、これから最上級生となる髙木ら3年生は、監督にチーム目標を提出しなければならなかった。
「僕ら、三冠というのにめちゃくちゃこだわってたんです。そうしたら、監督は、3位以上を目標にして、運がよかったら優勝ぐらいでいいんじゃないか、って。でもそこは絶対、譲れなかった」
青学大はその年の箱根駅伝で、チーム最高位タイとなる5位入賞を果たしていた。しかし、優勝した東洋大学とのタイム差はおよそ16分もあった。戦力的に充実してきていたとはいえ、客観的に見たら確かに力み過ぎているように映る。
髙木は「めちゃくちゃこだわってた」理由をこう話す。
「一つ下の神野たちが入学してきたとき、監督が、彼らが4年生になったときに三冠をねらいたいみたいなことをメディアに話していたんです。それって、僕らからしたら、すごい嫌じゃないですか」
神野の入学以降、青山学院大学には、次々とスター選手が入ってくるようになった。もう1年待てば、確実に学生三大駅伝制覇をねらえる布陣になる。だが、その大目標の達成を髙木たちの世代は、なんとしてでも「前倒し」したかったのだ。
青学大の部員でいられるための「最低タイム」
髙木と同学年で、チームの中心的存在だった高橋宗司は話す。