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酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
トライアウト会場外でスーツ営業マンが熱視線、YouTube撮影も…“元最多勝→今は六花亭”多和田真三郎らの「感謝とホンネ」が沁みる
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byYuki Suenaga
posted2023/11/16 17:41
グラウンドでプレーする選手たちを見つめる各球団関係者。ただ球場外には、彼ら以外も熱視線を送る人々は多かった
「まずは(トライアウトの)舞台に立てて元気な姿を見せられたっていうのは一番良かったかなと思います」と切り出し、サポートしてくれた六花亭への感謝の言葉を述べた。
「NPBへの思いは強いので戻るためにトライアウトに出ました。NPB以外の形で硬式野球をする考えは今のところありません」
バックネット裏には多くの球界関係者が顔を見せている。
ホストとなる日本ハムの稲葉篤紀GMの姿がある。ヤクルトの小川淳司GMもいる。小川GMとあいさつを交わしているのは、ファームリーグ新球団、オイシックス新潟アルビレックス・ベースボール・クラブの監督になった橋上秀樹氏だ。また、同じく新球団、ハヤテ223の山下大輔GMの姿もあった。北海道の独立リーグ、石狩レッドフェニックスの坪井智哉監督もいる。いつになく濃密なベンチ裏だった。
「キャッチボールやブルペンからアドレナリンが」
午後3時近くになり、やや暗くなってきた。38番目には日本ハム井口和朋がマウンドに上がる。
この投手は11月4日、ハヤテ223のトライアウトにも出ていたが、ハヤテ側の了承を得てNPBのトライアウトにも参加している。ヤクルトの松井聖を空振り三振、ロッテの速水将大を遊ゴロ、元ヤクルトの中山翔太(現独立リーグ熊本火の国サラマンダーズ)を空振り三振と快投を見せた。井口は以下のように語った。
「戦力外を伝えられてから、この日に向けて練習してきたんで、それは出せたかなと思ってます」
――慣れ親しんだ球場だが?
「いつもと違う雰囲気なんで、緊張しました。(多くの拍手を貰って)キャッチボールやブルペンからアドレナリンが出てる感じありました」
最速151kmの速球を投げ込んだ日本ハム姫野
上気した顔でマウンドに上がったのが39番目の日本ハム姫野優也だった。151km/hの速球に場内がどよめく。しかしオリックスの中川拓真、西武の中山誠吾、阪神の高山俊に四球を与えた。
「ファンの皆さんとか温かい言葉いただけたんで、悔いがないように投げようと思いました」151km/hが出たが?「すっきりしました。全部歩かせるのも僕らしいなと」野手から投手になって、両打にも挑戦して「なかなかできないことも経験させていただいたので、そこには感謝しかありません」
額に汗がにじんでいた。
投手組はトライアウトが終わればそのまま球場を後にするが、野手組は最後まで残る。