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バチバチの髪色、ピアスにネイル、バイトはアパレル＆飲食店…「選手は競技だけに集中すべき」は本当に正しい？《日本最速》甲南大女子陸上部が示すもの
text by
荘司結有Yu Shoji
photograph byShigeki Yamamoto
posted2023/11/19 17:01
9月の日本インカレ女子100ｍで2位に入った岡根（左）と3位の奥野（右）の2年生コンビ。甲南大女子の強さの理由について聞いた
確かに日本インカレを制した藏重みう（1年）、岡根、奥野に加えて、青山が完全復帰すれば、この中の誰かがエントリーから漏れるかもしれない。そう考えるとレベルの高さが窺える。
こうした常に競い合う練習に、伊東氏のひとりひとりの特性をよく観察した指導、個性を殺さない自由な雰囲気が相まって、甲南大の選手たちは高い意識を持ちながらも、のびのびと競技に打ち込めているように感じる。
「アスリートは競技だけに集中すべき」は本当に正しい？
世間では、オシャレやメイクを楽しむ女性アスリートが「練習に身が入っていない」と批判される風潮がいまだにはびこる。大学体育会でも「メイク禁止」「髪はショートカット」といったルールを設けているチームはあり、いわゆる女性らしいとされる行動はせず、競技のみに集中することが“アスリートの規範”のように語られてしまう。
こうした空気感をふたりはどう考えているのだろうか。岡根は少し考えて、こう言葉を紡いだ。
「やっぱりいまだに『髪の毛は短いほうがいい』『アスリートは黒髪が当たり前』という考えもあるかと思います。ただ、甲南大はそうした昔ながらのイメージを取っ払っていけているかなって。他の大学の選手にも、甲南がみんな自由に髪を染めたり、メイクしたりしても結果を残しているから『競技に関係ないって立証されてるやん！』って言ってもらえることもあるんです。自分たちの活躍が、強い子たちが自由になれるきっかけになるのなら、もっと頑張ろうと思えます」
彼女たちはオシャレを楽しんでいるから競技への集中度が欠けているわけでもなく、反対に競技のモチベーションになるからメイクをしているわけでもない。ただひとりの大学生として当たり前にオシャレやメイクをしながら、グラウンドでは競技に情熱を注ぐ。そこになんら矛盾はない。
来年は3年生となり、甲南大の中核を担う彼女たち。抱負を聞くと、力強い答えが返ってきた。
「リレーに関しては、私たちが最終学年になるまで優勝を重ねて4連覇したい。今年はその2回目だと思ったらまだまだ序盤かなと思っています」
来季の甲南大はさらに勢いを増すだろう。互いを磨きあった甲南スプリンターたちが、来年もトラックを鮮やかに駆け抜けることを期待したい。
ステレオタイプな体育会系とは一線を画す雰囲気の甲南大女子陸上部。それを率いる伊東浩司監督は、かつて長きに渡って100ｍの日本記録を保持した伝説のスプリンターだ。では、ある意味で「旧態の指導」のド真ん中で育ったはずの指揮官は、なぜその指導法を見直したのだろうか？（つづく）
