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朝倉未来「大晦日は必ず出るという考え方は古い」衝撃の敗戦から4カ月、キックルールのYA-MAN戦を決めた本当の理由《単独インタビュー》
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2023/11/18 11:00
『FIGHT CLUB』カード発表記者会見後、インタビューに応じた朝倉未来
「ケラモフに負けた時は自分にガッカリしました」
これまでとは違う朝倉未来の打撃。そこに興味がないという格闘技ファンはいないだろう。公開練習では、3vs3対抗戦の結果を「2勝1敗」と予想。続けて「誰が負けるか? 想像にお任せします……俺だけ負けたりして」と笑ってみせた。イレギュラーな試合に向けての準備を楽しむことができているということか。
今回の試合は、未来にとって“本職”ではない。勝ったとしても、それは“復活”ではないと言う。とはいえ、負けた時のマイナスは間違いなくあるのだ。どんなルールであれ2連敗となれば、また何を言われるか分かったものではない。“負けたらどうする”は、常に朝倉未来につきまとう。
「プレッシャーはいつも、ある程度感じてますね。背負ってるものもあるし。だからこそケラモフに負けた時は自分にガッカリしました。毎回、プレッシャーとはしっかり闘ってますよ」
そのプレッシャーも、自分だから感じるものなのだと理解している。注目も名誉も批判も、すべてはあって当然の大前提だ。なぜなら「俺は“職業・朝倉未来”ですからね」。
朝倉未来が格闘技から離れない理由
その職業の中から、試合という項目を外すつもりもない。少なくとも今は。闘わなくとも十分に稼ぐことができているのに、試合になるとプレッシャーを感じるのに、格闘技から離れない。
「何十億と持ってるのに格闘技やるヤツなんて、10人に1人もいないでしょうね。きついですよ。減量の水抜きだって命かかってますからね。でも好きなんですよ、格闘技が。俺はやらされるのが嫌いで、好きなことがしたい。で、格闘技は好きなんです」
なぜ格闘技が好きなのか。「フェアだから」と未来は答えた。
「リングに上がる時は1人じゃないですか。そこには何も持ち込めないんです。権力とか金とか関係ない。勝ち負けという結果が出て、それを自分1人が背負う。それが格闘技」
名声も金銭も好きなだけ手に入れてきた朝倉未来にとって、格闘技の勝ち負けだけが思うようにならないものなのかもしれない。自由を愛するからこそ自由にならないものに惹かれる。そんな見方は穿ちすぎかもしれないが、この“成功者”の本質はまだまだ掘り下げがいがある。