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「僕はレッドブルのドライバー」約束されていない2025年のシート確保のため角田裕毅は孤独な戦いを続ける
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images / Red Bull Content Pool
posted2023/11/11 17:00
メキシコGPのミスを糧に、ブラジルGPではスプリント6位、決勝9位の好成績を収めた角田
角田がピアストリと7位を争っていたとき、その前を走っていたのがチームメートのリカルドだった。口にこそ出さないが、角田がリカルドをかなり意識していた可能性は十分考えられる。
その根拠として、角田が置かれている現状が挙げられる。角田は2024年もアルファタウリに残留することが決まっている。しかし、これには紆余曲折があったとある関係者が明かす。
「残留が発表されたのは日本GPの土曜日でしたが、じつは3日前の水曜日の時点ではアルファタウリ側はダニエル・リカルドとリアム・ローソンというラインアップで行こうとしていました」
ローソンはリカルドの代役として第14戦オランダGPから第18戦カタールGPまでの5戦に出走していたレッドブルとアルファタウリのリザーブドライバーだ。シンガポールGPで9位に入賞し、評価を上げていた。
その情報を聞きつけたホンダがレッドブルを含めたアルファタウリ側と再交渉を行い、角田のシートを確保したというのである。
ドライバー角田裕毅の立ち位置
角田はレッドブル・ドライバーでもあるが、ホンダが育成したドライバーでもある。そのホンダは2025年限りでレッドブルとのパートナーシップを終了させ、2026年からはライバルチームのアストンマーティンとタッグを組む。ならば、ホンダの息のかかったドライバーにシートを与えるのではなく、レッドブルの育成ドライバーにチャンスを与えるべきではないか、というレッドブルの政治的な判断により、角田ではなくローソンにシートが与えられようとしていた。
その情報が単なる噂ではないことは、日本GP後のカタールGPで、角田がメディアの質問に答える形で、こう述べていることでもわかる。
「何よりもレッドブルには誤解をしてほしくないと思っています。例えば僕が今後はアストンマーティンに移籍しようと考えているというのは完全な誤解です。僕はアルファタウリに所属していて、18歳のときからレッドブル・ドライバーとしてレースをしてきました。レッドブルが、僕が他のドライバーより優れたパフォーマンスを発揮した場合、僕の将来について考慮してもらえればと思っています」