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「僕はレッドブルのドライバー」約束されていない2025年のシート確保のため角田裕毅は孤独な戦いを続ける
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images / Red Bull Content Pool
posted2023/11/11 17:00
メキシコGPのミスを糧に、ブラジルGPではスプリント6位、決勝9位の好成績を収めた角田
2024年のシートを勝ち取ったが、25年に向けてはなんの保証もない角田にとって、25年以降もアルファタウリに残留あるいはレッドブルへ移籍するには、コース上でのパフォーマンスでアピールするしかなかった。メキシコGPはそんな中で行われていたレースだった。
しかし、このような状況の中でレースをしているのは、角田ひとりではない。多くのドライバーが常にチームから厳しい目で評価を受け、自分の将来について交渉している。その孤独な戦いに勝つことができなければ、コース上での戦いには臨めない。
メキシコでの挫折を乗り越えた角田は、その1週間後ブラジルで、土曜日に開催されたスプリントで自身初となる6位入賞を獲得した。そのスプリントはメキシコGPを思い起こさせる展開だった。
ミスを乗り越えて
「なかなか前を走る(シャルル・)ルクレールを抜けなかったときは、メキシコGPでの出来事がフラッシュバックしましたが、今日は自分をうまくコントロールできていたと思います。たとえ、オーバーテイクできなくとも、そんなに悪いレースはしていないから、と自分に言い聞かせて走ることができました。それはレース終盤に(ルイス・)ハミルトンを抜いたときも同様です。無理にオーバーテイクしていったのではなく、最後まで落ち着いて走ることができました」
その逞しくなった心は、翌日の決勝レースでも角田の中で生き続けていた。16番手からスタートすることとなった角田だが、あきらめることなく、かつ気負うことなく、自分の走りに集中して、見事9位入賞を勝ち取った。その走りを見ていたレッドブルのクリスチャン・ホーナー代表はこう語った。
「ブラジルでユウキは良いレースをした。ダニエルも先週末(メキシコ)に素晴らしい走りを見せた。彼らが復調してきたことは、われわれファミリーにとっても実にいいことだ」
ドライバーの孤独な戦いは、これからも続く。