F1ピットストップBACK NUMBER
「僕はレッドブルのドライバー」約束されていない2025年のシート確保のため角田裕毅は孤独な戦いを続ける
posted2023/11/11 17:00
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Getty Images / Red Bull Content Pool
F1ドライバーは、時に私たちが考えている以上に孤独な環境の中で戦っている。メキシコGPとサンパウロGPの連戦での角田裕毅(アルファタウリ)が、まさにそうだった。
メキシコGPで8番手を走行していた角田は、7番手を走行していたオスカー・ピアストリ(マクラーレン)をオーバーテイクしようとして接触。弾き飛ばされ16番手まで後退し、その後必死の追い上げも及ばず、角田は12位でレースを終えた。今シーズンチーム最高位となる7位でフィニッシュしたチームメイトのダニエル・リカルドとは、あまりにも対照的な結果だった。
レース後、テレビ局のインタビューや記者たちからの質問で、ピアストリとの接触を尋ねられた角田は「ノーコメント」を貫いた。メキシコで角田の心は完全に閉ざされていた。
4日後、ブラジルで角田はこう明かした。
「(メキシコGPでの出来事を)消化するのが大変でした。だから、レース翌日は予定をすべてキャンセルして、ホテルの部屋にこもっていました。罪悪感を感じていたんだと思います。接触するまでは良いレースをしていたのに、あの接触でポイントを獲得するチャンスを失って、チームに対して本当に申し訳ない気持ちでいっぱいでしたから」
角田は、こう続ける。
「あのとき、僕は8番手を走行していた。19番手とかそういうポジションなら、多少無理してでもオーバーテイクを仕掛けてもいいかもしれない。でも、8番手なら、そのままでもポイントを獲得できた。シチュエーションマネージメントができていないと言われても仕方がありません」
8番手ではダメな理由
なぜ、角田は8番手に満足せず、前を狙ったのだろうか。角田はこう振り返る。
「僕にとって、大きなチャンスだったんです。8位ではなく、もっと上のポジションを狙っていました。事実、僕が接触する前に僕の後ろを走っていたランド(・ノリス/マクラーレン)は5位でフィニッシュしたんですから」