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甲子園の風BACK NUMBER
真鍋慧の視察でビックリ発掘→ドラフト指名…無名公立校「まさかプロ野球選手が出るなんて」スカウト対応も初めてだった“現場ドタバタ劇”
posted2023/11/02 06:01
text by
井上幸太Kota Inoue
photograph by
Kota Inoue
「まさかうちからドラフト候補が出るなんて」。今年のドラフト会議で、全国的には無名といえる島根の公立高校からプロ野球選手が誕生した。プロ注目のきっかけになった“ある試合”、スカウト集結のリアル、候補選手のケガ、ドラフト会議の準備まで……「すべて初めてだった」高校野球の監督が明かす、プロ有望選手を抱える“現実”とは。〈全2回の#1/#2へ〉
ドラフト制度の開始から約60年の歴史において、今回、初めて名前を読み上げられた高校がある。東京ヤクルトの育成2位指名でのことだ。
「第2順選択希望選手……髙野颯太。内野手、三刀屋(みとや)高校」
島根県雲南市にある、ごく普通の地方公立校にとって、ドラフト指名は髙野が第1号。記念すべき日だった。
そして、2017年秋から三刀屋の指揮を執る國分健(こくぶ・たけし)監督にとっても、教え子が指名を受けるのは、これが初めて。誰もが見上げるような強豪校も、幾多のプロ選手を育成した手練れの名将も、一度は通ってきた「初めてドラフト候補をチームに抱える」という経験。慌ただしくも幸せな“10月26日”を含め、一人の指導者がドラフト候補と過ごした日々を紐解いていこう。
「真鍋慧」の視察ついでに…唯一のチャンスを生かした男
國分監督は今年45歳。思わず “青年監督”と呼びたくなる若々しい外見だが、指導歴は20年を超え、県内でベテランと呼ばれつつある存在だ。
ドラフトとは無縁だった指揮官を取り巻く環境が一変したのは、昨秋だ。島根大会準優勝で出場した中国大会の初戦で、髙野が先頭打者本塁打を含む3安打をマーク。スカウトたちの目の色が変わった。