「これだけ成長してくれたなら、次の有馬記念でも！　という気持ちになりました」

　有馬記念での馬体重は492kg。2歳時のデビュー戦は474kgだったから、18kgも増えていた。ルメールの言う「肉体面での成長」を、数字が証明していた。

「1週前追い切りに騎乗したときも、天皇賞であれだけの競馬をしたのに、良い状態を保っていた。改めて成長を感じました」

　それでも、レースの中では不安もあった。まずゲートに入ると、イクイノックスは落ち着かない素振りを見せたと言う。

「ガタガタ動いていたので出遅れを心配しました。でも、前扉が開くとスッと出てくれて」

　しかし、すぐに次の不安が頭を過る。

「イクイノックスはスピードがあるので、レース前から『2500m戦だと掛かる心配があるな』と思っていました」

G1連勝後も“無敵の快進撃”

　すると向こう正面で本当に行きたがってしまったが、ここでは過去の失敗がルメールを助けてくれた。

「アーモンドアイで同じ経験（'19年の有馬記念で掛かり、9着に沈んだ）をしていたこともあり、何とかなだめられました」

　うまく息を入れられた結果、最後の直線では後ろを振り返る余裕もあった。2着のボルドグフーシュに2馬身半の差をつけ、ゆうゆうとGI連勝を記録した。

　その後は、今年の春シーズンも無敵の快進撃。日本を飛び出しても、彼の前に立ちはだかる馬は出て来なかった。