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《独占告白》ルメールが語る世界No.1ホースへの信頼…天皇賞の本命イクイノックスの強さとは「父キタサンブラックがそうだったように」
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph byIchisei Hiramatsu
posted2023/10/28 17:00
世界No1ホース・イクイノックスの成長の軌跡を語ったC・ルメール騎手
「コーナーは外目を回って、内側に何頭もいる状況だったので、逃げ馬は視界に入っていませんでした。だから、直線を向いて初めて、パンサラッサが15馬身くらい前で大逃げしている事を知ったのです」
その瞬間の正直な気持ちを尋ねると、少し表情を強張らせた。
「焦りました。パンサラッサは強い馬だし、イクイノックスは大跳びなので瞬時にエンジンがかかるか心配で。だから……焦りました」
ルメールは慌てて追った。すると――。
「春よりもワンランクもツーランクもアップした脚を見せてくれました。ラスト300mでは捉えられると思ったし、これは勝てると確信しました」
天皇賞前の調教で“余白が埋まって来た”
春は皐月賞で2着に惜敗すると、日本ダービーでも同じく2着。あと一歩のところで戴冠を逃していた。しかし、天皇賞を前に、成長の手応えを掴んでいた。
「イクイノックスの場合、精神面は幼い時から大人でしたが、春の段階ではまだ肉体面で成長の余地があったんです」
その分、皐月賞もダービーも、先頭でゴールラインを通過する事ができなかった。
「皐月賞では前を壁にできなかったとか、ダービーでは速いスタートを切れなかったとか、そういった点も体が出来上がっていれば何とかなったはず。どちらのレースも大外枠(18番)だったのも事実ですが、それですら、成長し切った後のイクイノックスであれば、何のディスアドバンテージにもならなかったと思います」
「完成してきたと確信」
だが、天皇賞前の調教に乗ったとき、そうした余白が埋まって来たのを感じた。
「お父さんのキタサンブラックがそうだったように、イクイノックスも時とともにだいぶ“パン”としてきたんです」
だから、抜群の加速でパンサラッサを捉えた際も、驚きはしなかった。
「3歳で天皇賞を勝つのはとても難しいので、それだけ強い馬ということ。本当に、春とは違う。完成して来たと確信しました」
「改めて成長を感じました」
惜敗続きだった春に感じたフラストレーションが吹き飛ぶと、未来へ向け、一気に明るい希望が湧いてきた。