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「勇大くんに感謝ですね」奇跡の出会いから10年超、東野有紗が語る“わたがしペアの現在地”「もうちょっとで金メダルにたどり着ける」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byL)Getty Images、R)Asami Enomoto
posted2023/11/11 11:02
直近のアジア大会では銀メダルを獲得、来年のパリ五輪では金メダルへの期待もかかる東野有紗
「勇大くんは責めてこない。『自分の球が悪かった』って…」
東野は東京五輪後、テーマの1つとして「レシーブの強化」を掲げてきた。ミックスダブルスでは女子を狙うというのが1つのセオリーとしてあり、東野も試合の中で狙われてきた。男子のスマッシュをどう返すか、どう浮かずに低いショットを返せるかを考えてきた。
「狙われるのは大前提です。東京オリンピックで言うと中国のペアには一歩も二歩もその点で及ばなかったし、全然足りないなって思いました。(コーチの)ジェレミー(・ガン)さんとも相談して、レシーブをより練習に加えて取り組んできました。自分のレシーブを自信を持ってできるようになってきたし、今、自分のレシーブで相手を崩せているなと試合の中で思えるようになっています。レシーブをもっともっと強化していきたいなと思っています」
何よりも重要なのは自信だと言う。
「これだけバドミントンの大会数が多くて疲れとかも残っている中で、どの試合も全部自分のパフォーマンスが出せるとは限らないです。その中で、狙われてしまったときにどんどんメンタルで落ちてしまう選手もいる。自分もそういうときはあったからすごく分かるんですけど、だから自信を持ってプレーするというのがいちばん大事だなと思います」
「ただ」と付け加えた。
「勇大くんに関して言えば、責めてこないし、『自分の球が甘かった』って言ってくれる。自分が悪くても勇大くんがそう言ってくれることに感謝ですね」
アジア大会では銀メダルを獲得
9月から10月にかけて行われたアジア大会では銀メダルを獲得した。前回はメダルなしに終わっていた大会だ。バドミントンはアジアのレベルが高い。ミックスダブルスではここ2回のオリンピックの表彰台はアジア勢が占めていることを考えてみても、それも大きな成果であった。
その中で収穫と課題も得た。
「やっぱりコンディションの維持ですね」
渡辺は大会へ向けてあまり練習ができていなかったという。また東野も思いがけない事情で疲労を抱えていた。福島由紀と急きょ、女子団体戦のダブルスに出場したことだ。福島の本来のペアである廣田彩花のコンディションの問題からだった。
「メンバーが発表されたときに名前があって『え?』と思ったんですけど、日本チームとして行っているわけだしやっぱり貢献したいと思いました。ただ団体戦の試合をした日に熱中症になって」
その後、個人戦のミックスダブルスに出場。勝ち進んで迎えた準決勝では新たに馮彦哲とペアを組んだ東京五輪金メダルの黄東萍と対戦し、逆転勝利をおさめた。
ただ決勝ではその疲労も加わり、試合の途中で「足が止まった」。
「もっともっと体力をつけなきゃなと思います」