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「ただレースを楽しみたい」マルケスついにホンダと決別、来季ドゥカティでの超人的パフォーマンスに期待大!
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2023/10/20 11:02
インドネシアGP開幕前日の公式会見で移籍を語ったマルケス。決勝レースは7周リタイアだった
その翌年、ホンダはマルケスと2021〜24年までの4年契約という前代未聞の長期契約を交わす。このとき、マルケスには新たなメーカーでチャレンジしてほしいと願うファンも多く、長期契約にがっかりする声も多かった。そして、2020年になってコロナ禍が世界を覆い、開幕が遅れた7月のスペインGPでマルケスは大けがをしてしまうのだ。
当時、マルケスの最大のライバルはヤマハのファビオ・クアルタラロだった。スペインGPはクアルタラロがもっとも得意とするサーキットのひとつで、マルケスはクアルタラロに苦しめられた。PPから逃げるクアルタラロ。それを追いかけるマルケスはコースアウトを喫し、大きく遅れるも猛列に追い上げて3番手に浮上。「今回は3位でいい」と思った矢先の転倒事故だった。
このレースで転倒し骨折しなくても、この年のタイトル争いは厳しかったのではないかと想像される。ウインターテストでホンダは思うような結果を残せず苦戦していたし、スペインGPの結果はそれを反映するものだったからだ。
以来、マルケスの厳しい辛い戦いが始まる。2021年にはシーズン3勝を挙げて本来の強さを取り戻しつつあるように見えたが、タイトルを獲得したのはクアルタラロで、パフォーマンスが向上したドゥカティにも勝てないレースが増えていく。2022年にマシンの開発に失敗したホンダはいまだに状況を改善できず、それが今回のマルケス移籍につながった。
唯一無二のパフォーマンス
マルケスがデビューしたときからその走りに魅了されてきた者のひとりとして、今回の決断は大歓迎である。この数戦のマルケスはマシンの向上も手伝ってか、再び随所で限界に迫る走りを見せている。今年初開催となったインドGPのバックストレートでは、マルケスにしか出来ないハードブレーキングに魅了された。それは見ているファンにも伝わるのだろう。マルケスが来るたびに大きな拍手が送られた。
その翌週、ホンダを離れる決断をした日本GPでのマルケスは、ライダーのスキルが試される雨の決勝レースで3位になっている。赤旗中断がなければ優勝したのではないかというペースだった。
来季、ドゥカティに乗ったマルケスがどんな走りを見せてくれるのか。再び、我々を驚かせてくれるパフォーマンスを見せてくれるのではないかと、楽しみで仕方がない。