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「ただレースを楽しみたい」マルケスついにホンダと決別、来季ドゥカティでの超人的パフォーマンスに期待大!
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2023/10/20 11:02
インドネシアGP開幕前日の公式会見で移籍を語ったマルケス。決勝レースは7周リタイアだった
転倒が続いたマルケスは、「10位や15位でゴールするのなら快適だが、自分はそこを目指しているわけではない」と、無理をする理由を説明したが、その結果、怪我も決勝をキャンセルすることも多かった。そんなこともあり、今シーズン後半は、現状でのベストを目指す方針に転換。表彰台争いにはほど遠くても、確実に走り切ることにした。その結果、10位前後でとりあえずの完走を続けたが、誰もが知っている最強最速のマルケスの走りは見られなくなった。
その頃からマルケスはグレッシーニとコンタクトを取り始めた。それがたびたびパドックの噂に上るようになるのだが、実際には契約交渉は進んでいなかったようだ。しかし、9月下旬のインドGP、日本GPの2連戦で状況が大きく変化。グレッシーニの来季の体制構築のタイムリミットが迫っていたからだ。マルケスはホンダと多くの話し合いの場を持ち、最終的に離脱を決断。そして、グレッシーニとの交渉が本格的に始まった。
「決断を下したのは日本GPの後だった。いろいろ悩んだが、一番簡単な方法はホンダに残ることだったし、ホンダとの話し合いが最後まで自分にとっては最優先だった。でも、自分のキャリアを大切にしたいのであれば、新しいチャレンジを見つけ、それを実現する必要があると感じた。そのための最高の場所がグレッシーニだったんだ。この決断に至るまで、チームのみんなとたくさん話し合った。チームとしてではなく、友人としていろいろアドバイスをしてくれたことが今回の決断の助けになった」
6度の戴冠を支えた天才的スキル
マルケスがホンダ入りしてから、ホンダRC213Vのお陰でタイトルが獲れたと言えるのは、ほんの数年しかなかったように思う。少なくとも共通ECUになり、MotoGPに参戦するメーカーのパフォーマンスが互角になった2016〜17年は、ホンダは電子制御の部分で苦戦した。その状況でタイトルを獲れたのは、まさにマルケスの天才的なライディングがあったからだ。
2018〜19年にはホンダのパフォーマンスも上がってきたが、厳しい車両規定の中でメーカー間の接戦は続いた。その中でマルケスはライダースキルの高さで6度目のタイトルを獲得し、マルケスの時代は当分続くのだろうと誰もが思った。