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ラグビー界で流布するアイルランドの“呪い”って知ってる?…世界ランク1位の「超強豪国」がベスト8で“0勝8敗”のナゼ《今回もW杯で敗戦》
text by
大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph byKiichi Matsumoto
posted2023/10/17 17:16
今大会での引退を発表していたアイルランドSOのジョニー・セクストン。それだけに懸ける想いも大きかったが…
だが、アイルランドは変身した。
2013年、NZ出身でフランス、アイルランドでコーチとして実績を残していたジョー・シュミット前HCを招聘。シュミットHCはアイルランドに緻密な分析、謙虚さとハードワークを尊ぶ姿勢など、ラグビー王国NZの文化を取り入れ、2014、2015、2018年の6カ国対抗に優勝。2017年に来日したときは日本代表との対戦を前に、日本の警戒すべき選手の特徴と対策を詳細にわたって触れ、日本のメディアを驚かせた(それまで、日本代表をそこまで研究してくる上位国はほぼなかった)。
代表チームにも前述のバンディー・アキをはじめ、NZ出身のSHジェミソン・ギブソン=パーク、WTBジェームズ・ロウ、オーストラリア出身のPRフィンレイ・ビーラム、WTBマック・ハンセン、南アフリカ出身のHOロブ・ハーリングら、海外で育った才能も登用。愚直さだけではない工夫を凝らしたアタック、決定力も高めた。2016年にはNZから史上初勝利を奪いNZのテストマッチ連勝記録を18で止めた。2019年ワールドカップを最後にシュミットHCが退任した後を継いだアンディー・ファレルHC就任後は6カ国対抗で3位、3位、2位、1位と着実に上昇。2022年には敵地NZでの対オールブラックス3連戦に1敗ののち連勝して史上初のツアー勝ち越しを飾った。
条件はそろっていたが…それでも勝てないW杯の難しさ
進歩していたのはテストマッチだけではない。ウェールズ、スコットランドの上位クラブとともに今世紀初頭から結成していたセルティックリーグは2010年からイタリア勢を、その後はスーパーラグビーを離脱した南アフリカ勢を迎えてユナイテッド・ラグビー・チャンピオンシップに拡大。大会の強度が上がり、コーチング技術、戦術理論などの交流も進み、プレーの強度も向上した。すべてのカードは揃っていたはずだった……。
しかし結果は残酷だった。アイルランドサポーターの気持ちを思うと切なくなる。私にとって初めてのワールドカップ取材となった1991年大会、日本代表がアイルランドから3トライを奪って食い下がると、ダブリンのパブでは「ジャパンは良かったぞ!」と頼んでいないギネスビールのパイントグラスが次々と運ばれてきた。その現象は大会中ずっと続いたものだ。