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実は《怪物ルーキー》だけじゃない?…10年ぶりに箱根路復帰の東農大 “大根踊り”と一緒に年始に見たい「三段ロケットスタート」の可能性
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph byYuki Suenaga
posted2023/10/16 11:03
左から高槻(4年)、前田(1年)、並木(4年)の3人。いずれも1万mで27分台に迫る、大学トップクラスの実力を持つ。箱根本戦で1~3区に並んだら…?
怪物ルーキーの才能に、いち早く目をつけていたのが小指監督だった。チームの再建を託され、監督に就任したのが2018年11月のこと。100回記念大会での復活を目指し、スカウト活動にも力を入れてきた。
スカウト初年度に高槻芳照、並木寧音(共に4年)という核となる選手を勧誘すると、2人はチームのエースへと成長。彼らに続く将来のエース候補として、報徳学園高の前田に目をつけた。
「もともと報徳から選手が来ていましたので、あれはいいぞっていう、評判は聞いていたんです。伸びるという情報はキャッチしていたので。まだ成績も出ていなかった1年生の時から声をかけて、頻繁に高校にも足を運びましたね」
前田は中学まではサッカー部で、高校から本格的に陸上を始めた。ジョグを中心に、じっくりと基礎を固めていく指導のもとで才能を開花。高2の秋頃からは全国でも知られた存在になる。そして高3のインターハイでは5000mで日本人トップに。高校トップクラスの実力者が決して強豪校とは言えない大学に進学したのは、いち早い声がけとその熱意が実ったからだった。
強力な4年生二枚看板+黄金ルーキーの化学反応
大学でも負荷の高い練習はさせずに、練習の継続性を重視。将来的なマラソン挑戦も視野に入れながら、じっくりと実力を磨いている。今日の結果を振り返って、前田が良かったと振り返るのも、東農大の練習スタイルである。
「基本的に、倒れるくらいまで絞り出すっていう練習はしてないです。つねに余裕を持って継続することが、僕は一番力になると思っているので。そういうことを監督もコーチもわかって下さっていて、先輩たちと良い練習が積めています」
もう一つ、前田を走らせたのが、沿道からの声援だった。4年振りに声出しの応援が解禁され、東農大名物の大根踊り(応援団が大根を両手に持って演舞する)も復活。絶え間なく聞こえてくる自身への声援に背中を押してもらったと話す。