濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「女優兼業に風当たりも…」退団から8年後の試合復帰、元スターダム・澄川菜摘の“大人の魅力”「リングは神聖な場所」《特別グラビア》
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byTakuya Sugiyama
posted2023/10/14 11:03
元スターダム、現在はアクトレスガールズで活動している澄川菜摘
「大阪では事務の仕事をしてました。仕事自体は好きだったんですけど、9時から5時までの決まりきった生活はとにかく刺激がなくて。同級生とか周りの友だちは結婚したり子供ができたりするんですけど、それも全然うらやましくなくて(笑)」
結局、自分が楽しくできることは何なのだろう。人生で楽しかったのはいつだろう。考えてみると、やはり演劇とプロレスをやっていた時期だった。3度目の上京。演劇活動を再開したが、今度はすぐにコロナ禍がきた。出演が決まっていた舞台も流れてしまう。そういう時期に、プロレス入りのきっかけとなった坂口から連絡があった。
澄川がアクトレスガールズで復帰を決めた理由
坂口はアクトレスガールズという団体を旗揚げしていた。“女優によるプロレス”というコンセプトで芸能界から選手をスカウト。現スターダムの中野たむやなつぽい、フリーの安納サオリもこの団体の出身だ。
アクトレスガールズは2021年いっぱいでプロレス団体としての活動を休止。2022年からは「プロレスを用いたよりエンターテインメント性の高い公演」に移行した。プロレスを続けたい選手たちは退団していった。一方、澄川は新体制のために誘われたのだった。
「たくさん選手が抜けて、2022年から新しい選手たちがどんどんデビューすると聞きました。私としても長いブランクがあったので、スターダムで復帰するのは考えられなかった。新人たちとプロレスを勉強し直すくらいの気持ちでなら、またやれるかなと」
2021年11月にリング復帰。新体制では中心選手として活躍すると同時に新人たちの指導も務める。アクトレスガールズでは、最初の練習から衝撃を受けたそうだ。
「リングに座って休んだり喋ったりしてるんですよ(苦笑)。スターダムでは考えられないことです。リングは神聖な場所だし、そもそも練習するためにリングに上がるんだから座ってる意味が分からなかった。感覚がまったく違うんだなと」
自分がスターダムに入門した頃は、リングで練習する機会自体が少なかった。今では、それがよかったのかもしれないと思う。リングを使わなくてもできる練習で、基本を徹底的に叩き込まれた。
「本当に厳しい練習でしたけど、今は“あの時あれだけやっておいてよかった”と思います」
「応援する気にならない試合も正直ある」
プロレスの技術とフォーマットを用いた新しいエンターテインメントを目指すアクトレスガールズは「アクトレスリング」という公演を開催。事前に勝敗を決めていると公表し、パフォーマンス力やグッズ・チケット売り上げなどを数値化して勝敗を決める「ポイントマッチ」という試合形式もある。
ただリング上で展開されるのは、形としてはプロレスそのもの。既存のプロレスと比べて何が違いどう面白いのか、実のところまだはっきりと打ち出せてはいない。