濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「女優兼業に風当たりも…」退団から8年後の試合復帰、元スターダム・澄川菜摘の“大人の魅力”「リングは神聖な場所」《特別グラビア》
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byTakuya Sugiyama
posted2023/10/14 11:03
元スターダム、現在はアクトレスガールズで活動している澄川菜摘
「演出だったりパフォーマンス、従来のプロレスと違う部分は運営側に方向性を示してもらうしかないですよね。それがなかなかできていないので、外部に人材を求めてもいいのかもしれません。ただプロレスをベースにした新しいエンタメであるなら、私たち選手はまずそのベースをしっかり作る必要があります」
アクトレスリングでは試合展開もあらかじめ作られており、リハーサルを重ねて試合に臨む。
「実力を蓄えて試合をするんじゃなくて、試合を見せることありきなので、どうしても形だけになりやすいんです。華やかではあるんですけど。試合に感情がこもってなくて、1ミリも応援する気にならないような試合も正直あります」
たとえば新人の試合では「その技、どこが痛いか分かってかけてる?」というような時もある。だから練習で“本物の技”を味わってもらうことも。昨年夏からは風香がプロデューサーに就任。メディアへの売り込みと同時に「プロレス」という言葉をはっきりと使うようにもなった。
「成長過程だけど華のある選手がたくさんいる」
方向性はまだ曖昧だが、そのことで売り出し方などはスッキリしてきた。それはプロレスの試合として言い訳が利かなくなったということでもあるだろう。澄川の指導も厳しくならざるを得ない。その成果というべきか、彼女が率いる「THE ROYAL」はユニットトーナメントで優勝。メンバーで最もキャリアの浅い後藤智香も成長が目立つ。
「後藤には基礎の大切さをずっと言ってきましたね。形だけになると“それは嘘だよ”と。派手な技が求められるのも分かるんですけど、最初はエルボーと(ボディ)スラム、ドロップキックだけで試合をするくらいでいいと思うんです。それだけでも十分に表現できるし、技を増やすのはそれができてからでいい」
私がスターダムで学んだことをもっと教えられたらいいんですけど……と澄川。とはいえ澄川、惡斗、そして風香と団体のリーダーシップ・グループにスターダムを知るメンバーがいるのは強みだ。
「若くて成長過程だけど華のある選手がたくさんいる。そういう意味で今のアクトレスガールズは昔のスターダムに似てるとも思うんです」
澄川の期待に新人たちがどこまで応えられるかで、団体の未来も変わってくるだろう。そして若い選手が次々とデビューする状況だからこそ、澄川の“大人”としての魅力も際立っている。