濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
元パティシエが蛍光灯で殴り合い…“デスマッチアマゾネス”山下りなの媚びない魅力「犯罪以外なら何してもいい」 米国で男子相手に王座獲得
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2023/10/11 17:01
アメリカの団体GCWではデスマッチ王座を獲得。日米で注目を集めるデスマッチファイターの山下りな
8月の横浜大会を終えると、山下はまた渡米。帰国したのは10月10日、12日のGCW日本大会に合わせたタイミングだった。12日は団体初の“聖地”後楽園ホール進出だ。今や年の半分はアメリカでの活動。日本で試合をする時には“アメリカのデスマッチ王者、トーナメント優勝者”として狙われる立場になった。選手の中で一番“格上”なのが山下なのだ。
「おいしい獲物になれてるってことですかね。まあ山下には何やってもいいと思われてるんでしょう」
実はそれが大事なポイントだ。自分の強みについて「相手の選手から“何やってもいい”と思われてるところ」だと山下は言う。
「竹田誠志なんて“山下には犯罪以外なら何してもいい”と言ってましたからね。確かにその通りだなと(笑)。私はやられたらやり返すタイプ。だから遠慮なく攻撃してくれたほうが力が出せるんです」
デスマッチで何度も血の海に沈んだ。それは相手の技を受けまくったということだ。蛍光灯で殴られ、イスの山に投げつけられ、ぶっ倒れてもまたデスマッチのリングに上がる。その繰り返しがあったから「何をやっても大丈夫」となった。それはデスマッチ界での“信頼”を積み重ねたということだ。デスマッチファイターとして誰にも劣らぬ信頼を得て、だから山下りなは強い。
プロレスラーになる前は、ウェディング系パティシエだった
本人としては「女子なのに凄い」と応援されるのもありがたい。ただ自分ではことさらに男女対戦を意識はしないそうだ。GCWでは山下とマーシャ・スラモビッチ、2人の女子選手がチャンピオンという時期があった。そういう時代なんだなと思わされたが、山下は「時代のおかげでベルトを巻けたわけじゃない」と言う。
「べつに追い風なんてなかったですよ。向かい風でもなかったけど。私とマーシャが同時にベルトを巻いたのは、たまたま同じ時期に結果を出したというだけ。時代に関係なく、私たちが力を発揮したんです。
男とか女とかじゃなくて、みんなデスマッチファイターなんで。違いはもちろんありますよ。体の大きさも違うし、男子選手と対等だとも思ってないです。でもみんなそうなんですよ。男子にも小さい選手はいるし、いろんなタイプがいる。それぞれが自分の特徴を活かして闘うしかないし、私もそれをしている。まあ確実に違うのはち○ち○ついてるかどうかくらい。ついてる相手は握り潰しにいきます」
8月にタッグを組んだ竹田は、山下について「スゲえ、けどムカつく」と言った。「その感情、なんて呼ぶか教えてやろうか」と山下。竹田はすかさず答えた。
「ジェラシーだよ!」
もう「よく頑張った」ではない。山下はトップ選手すら嫉妬する存在になったのだ。自分がやりたいことを貫いた結果だった。どれだけ血を流しても、デスマッチはやりがいがある。プロレスラーになる前はウェディング系のパティシエだった。
「人生の節目に携わる仕事じゃないですか。もの凄く責任がある。人の人生に責任持つのは私がやることじゃないなと。崖っぷちでも、全部自分に返ってくるフリーのプロレスラーが楽しいですね」