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元パティシエが蛍光灯で殴り合い…“デスマッチアマゾネス”山下りなの媚びない魅力「犯罪以外なら何してもいい」 米国で男子相手に王座獲得
posted2023/10/11 17:01
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Norihiro Hashimoto
“世界で活躍する日本人”はさまざまなジャンルにいる。野球、サッカー、海外の映画祭で賞を獲得する映画監督も。世界最大の格闘技団体UFCで連勝しているのは平良達郎。プロレスではアメリカのWWEで中邑真輔やイヨ・スカイ、ASUKAがトップ戦線にいる。
山下りなもアメリカで活躍するプロレスラー。日本でさまざまな団体に出場すると同時に、アメリカではGCWを主戦場としている。昨年8月、彼女はGCWのウルトラバイオレント王座を獲得した。GCWは女子団体ではなく男女混合のプロモーション。そしてウルトラバイオレントはこの団体のデスマッチ王座だ。山下はアメリカで男子選手に勝ってデスマッチのベルトを巻いたのである。
さらに今年6月には、GCWの「トーナメント・オブ・サバイバル8」で日本人初、女子初の優勝。恒例となっているGCWの日本ツアーでは、男子選手を引き連れ大将格として日本の選手たちと闘う。
なぜ“デスマッチ戦線”に?
2013年、WAVE系列のOSAKA女子プロレスでデビュー。WAVEのシングル王者にもなった。デスマッチはもともと見る側。“デスマッチのカリスマ”葛西純らが所属するFREEDOMSの会場に行くと、社長兼レスラーの佐々木貴が「勉強がてら見ていってよ」と中に入れてくれた。正岡大介vs.吹本賢児のタイトルマッチには涙を流すほど感動したという。
2019年にフリーランスになると、FREEDOMSからもオファーがきた。デスマッチ戦線参入だ。「運がよかった」と山下が言うのは、タッグ王座戦でベテランの藤田ミノルと組めたこと。
「先生みたいな存在なんですよ。何か具体的に教えてくれるわけじゃないんですけど、藤田ミノルの近くにいると“そんな考え方していいんだ”と思うことがたくさんある。視野を広げるのは横方向だけじゃないんだなって。上も下も後ろも見る。自分の足の裏も見てみる。その辺の石だって引っくり返すみたいな」
藤田に学び、葛西純や竹田誠志といったトップ選手に揉まれながら、山下はデスマッチファイターとして成長していく。もちろん、最初から結果を出せたわけではない。文字通り“血の海に沈む”試合を何度も繰り返した。
「デスマッチは本当に難しいですね。最初は“女子だけど頑張ってる”みたいな見られ方でした。フリーになりたてだったから、人生についてもいろいろ考えました。ただそれも含めてやりがいしかなかった。団体をやめる時に“お金のこともグッズの管理も全部自分でやらなきゃいけないんだよ”って言われたんですけど、私は“全部自分でやっていいんだ”って思いました。フリーは毎日が崖っぷちだけど、それが合ってるなと。崖っぷちなんだからメチャクチャやってやれって。フリーになってなかったらデスマッチもやってないです」