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元パティシエが蛍光灯で殴り合い…“デスマッチアマゾネス”山下りなの媚びない魅力「犯罪以外なら何してもいい」 米国で男子相手に王座獲得 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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posted2023/10/11 17:01

元パティシエが蛍光灯で殴り合い…“デスマッチアマゾネス”山下りなの媚びない魅力「犯罪以外なら何してもいい」 米国で男子相手に王座獲得<Number Web> photograph by Norihiro Hashimoto

アメリカの団体GCWではデスマッチ王座を獲得。日米で注目を集めるデスマッチファイターの山下りな

アメリカで言われた「あなたの試合で、私も頑張れるよ」

 男子相手でも結果が出せるようになってきたのは「ベルトを巻いたことがきっかけじゃないですか」と山下は言う。矛盾するようだが“いったん勝ったら勝てるようになる”ということもあるのが勝負の世界だ。メンタル面でも変化があった。

「ウルトラバイオレント王者として、団体の象徴として見られるわけじゃないですか。団体の歴史の一部として名前を刻んだ立場でもある。負けて“よく頑張った”じゃ許されないんですよ。まして日本から呼んでもらってるんで、替えのきかない存在にならないと。何十万円っていう旅費を出してアメリカまで呼んでくれること自体、自信になりますね。お客さんが翻訳機を使って話しかけてくれたりもして。“あなたの試合を見て、私も明日また頑張れるよ”みたいな」

 アメリカが合っていたというより、GCWが合っていたと山下は思っている。選手もスタッフもファンも「みんな気持ちのいい人たちばかり」だと。日米のデスマッチの違いについて聞くと「日本のほうが正確で丁寧」だそうだ。

「日本では“蛍光灯デスマッチ”とか試合形式があらかじめ発表されますけど、アメリカではそれがない。大会当日、会場にアイテム班がいていろいろアイテム(凶器)を用意してるんです。“これを使ってほしい”とリクエストがあったり、こっちからもリクエストしたり。でも、いざリングに上がると頼んだアイテムがなかったり、頼んでないアイテムが置いてあったり(笑)。試合前の作戦がその時点で通じなくなるので、臨機応変さは鍛えられますね」

 臨機応変さはデスマッチで活躍するために欠かせない要素だ。蛍光灯を使っても硬くて割れない時があるし、思いがけないアクシデントが頻発する。

「そういう時に“どうしよう”となったらお客さんにもその空気が伝わるので。同じ技をもう一回やるパターンもあるんですけど、それだとお客さんがホッとするだけ。失敗した技以上のことをやらないと盛り上がらないんです。そういう臨機応変さでは、葛西純が飛び抜けてますね」

「山下には犯罪以外なら何してもいい」は信頼の証

 結果を出すことで、山下りなというデスマッチファイターのバリューはどんどん上がっていく。8月、FREEDOMSのビッグマッチである横浜武道館大会では竹田誠志とタッグを結成。対戦したのは葛西純と新日本プロレスのエル・デスペラードだ。竹田、山下との対戦はデスペラードも望んでいた。

 昨年、新日本とスターダムが合同興行を開催した時には、男女タッグの試合が物議を醸した。男女の対戦に忌避感を抱く者も少なくなかったのだ。しかしデスペラードと山下が闘うことになっても聞こえるのは期待の声ばかり。2人は何の問題もなく闘い、血を流した。「デスペさんとはGCWでシングルやりたいですね」と山下。

【次ページ】 プロレスラーになる前は、ウェディング系パティシエだった

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