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「優真がアーティストとして進化」あのコストナーが鍵山優真20歳のコーチに…門外不出のレッスンで誕生した名ステップ「高得点に頭を抱え…」
posted2023/10/05 17:00
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph by
Asami Enomoto
鍵山優真(20)が怪我からの華麗な復活劇にむけて、驚くべきコーチ体制を整えた。今季の全日本選手権予選である東京選手権(9月21-24日)で優勝した彼は、落ち着いた様子でこう語った。
「技術面は、今まで父にジャンプやスピンの細かい部分を教わってきました。一方で、スケーティングや表現面は、カロリーナ・コストナー先生がコーチについてくれて、イタリアでたくさん表現やスケーティングの伸びを教わってきました」
父の正和コーチと、イタリアの至宝コストナーがタッグを組む日が来るとは、誰もが予想しなかっただろう。鍵山の東京選手権での演技は、その“予想もできない”飛躍を感じさせる一戦だった。
北京五輪銀メダル後、初めての葛藤
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怪我が発症したのは、22年夏。左足の疲労骨折だった。スケーティングに悪い癖があるタイプでもなく、怪我知らずで北京五輪銀メダルへと駆け上った気鋭にとって、初めての葛藤だった。
「父とは何度も話し合いました。(22年)全日本選手権だけはどうしても出たいと、僕から言い出しました」
“1年しっかり休んで完治させるべき”と考える父親を説得し、全日本選手権(12月、大阪)に出場。8位に終わったが、多くのものを得た。
「思い切り練習できない状態で、僕が出たいと言って出させてもらい、満足できない演技をしてしまったのは悔しい気持ちです。でも、今後の自分がやるべきことが明確にわかりましたし、出たことに後悔はありません。しっかり休んで怪我を直し、来季頑張りたいです」
年明け以降、多くのトップ選手が国際大会への派遣を決めるなか、鍵山の派遣はゼロ。長いオフが訪れた。
まずは心をリセットするところから始めようと、「こんなに長い間氷に乗らなかったことはない」という2カ月間、休養。3~4月には、自然豊かで穏やかな空気の流れる、イタリア北部のアルプスで合宿を行った。
コストナーにコーチ就任を依頼
ここが転機だった。振付師のローリー・ニコルとともに、懇意にしているコストナーもコーチとして参加してくれたのだ。