オリンピックへの道BACK NUMBER
9年越しの現役復帰、4回転も…36歳・織田信成は“なぜ大歓声を浴びたのか?” 記者に見せたユーモア「ウザいおじさんでいきたい(笑)」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byJIJI PRESS
posted2023/10/03 17:30
2023年も現役選手として大会出場を続けている織田信成
36歳で成功させたトリプルアクセル
こうして迎えた今シーズンの近畿選手権であったが織田は現在36歳。しかも9シーズン、競技から離れての復帰である。
高難度ジャンプに取り組む選手が増えた今日ではあっても、4回転ジャンプやトリプルアクセルは1つの指標だ。長期のブランクがあり、そして20代半ば過ぎで退く選手がほとんどのフィギュアスケート界では異例の36歳という年齢にあって、トリプルアクセルを成功させ、4回転トウループを着氷した。それはまさに歓声を浴びる理由として十分であった。
しかも合計得点230.90点は、単純に比較はできないが昨年の全日本選手権では9位に相当するし、国際大会に出てもおかしくはない点数だ。ただ復帰しただけではない、内容も十分に伴った演技を示した。
「矜持、誇りを取り戻したい」
試合後、あらためて復帰し、全日本選手権を目指すことを決めた胸の内を語った。
「自分も若くはないですけど、挑戦するなら今かな、と。挑戦すべくして挑戦しているという気持ちがあって。アイスショーをずっと滑っていても、落ちてしまって。スケーターとしての矜持、誇りを取り戻したいという気持ちがあって、今はちょっとずつ戻しています」
競技から退いたあとも、アイスショーに出演、あるいはジャパンオープンに参加し、キレのある演技とジャンプを見せてきた。それでも年々、もともとの滑りから遠ざかっているように思えたのだろう。だからこそ、復帰して挑戦する道を選択した。
ただ、2013年までとは身体も異なってきている。
「今日の朝も6時台から公式練習でしたが、20代と30代の朝は全然違います。なるべく早く起きて体をあたためるためにアップにかける時間も長くなりました」
「年齢的な部分もあるけれど柔軟性が足りないので、競技性に特化した柔軟性を鍛えてスピン、ステップにつなげられれば」