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「お前は試合で“使えない”」「罰として草むしり1週間」部活で普通も“じつは法律的に危ない”監督のパワハラ言動…元野球部の弁護士に聞く
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byGetty Images
posted2023/10/01 11:02
丸刈りの強制、叱咤とパワハラの境目……高校球界の「普通」は、法律的にはどう解釈されるのだろうか(写真はイメージです)
松坂 参加を認めない期間によっては、違法となる場合もあるでしょう。府立高校の黒髪の問題のときも校則は問題なしとの判断でしたが、髪の色を理由にクラスに席を置かず、修学旅行への参加も認めなかったことに対しては違法との判断でした。数日間、練習させないぐらいなら許容されるかもしれませんが、何週間もグラウンドから追い出して事実上、退部を迫るような態度を取るのはやり過ぎでしょうね。そもそも丸刈りの強制も校則ではないわけですよね。野球部の監督という、校内のいち指導者の独断と言えば独断なわけです。その独断に違反したからといって、そこまでやる必要性や相当性があるんですか、と。
――これは髪の毛ではなく眉毛の話なんですけど、ある高校で、眉毛を剃っているのがバレて、一週間くらい草むしりをさせられたという話があったんです。それもほんの少し、整える程度だったんですけど。
松坂 それは違法でしょうね。そもそも眉毛を整えた程度で何か制裁を加えるということが許されるのかという問題もありますし、1週間も草むしりをさせるというのは典型的なパワハラですよ。グラウンドの草むしりであれば、いちおうグラウンドをきれいにするという名目は立ちますけど、普通の会社だったら完全にアウトでしょうね。意味のない労役を科しているだけですから。
――眉毛をいじってはならないというのも、高校野球部ルールの「あるある」なのですが、それも合理性はあると判断されるのでしょうか。昔のヤンキーのように爪楊枝みたいに細くするのはどうかなと思うのですが、適度に眉の形を整えるというのは、もはや身だしなみとかエチケットの範疇のような気もします。ひげを剃るのと同じ感覚だと思うんですよ。
松坂 監督の言い分としては、丸刈りと同じで、野球に集中するために見た目を気にし過ぎないということなんでしょうね。
「グラウンドから出てけ!」はダメだった…
――先ほど、パワハラという言葉が出ましたが、高校野球におけるパワハラも最近、問題になることが多いですよね。「死ね」という言葉はさすがにアウトだとわかってきたと思うのですが、よく言いがちな「(グラウンドから)出てけ!」はどうなのでしょう。